M&Aブティックとは？依頼するメリットや業務内容を解説

M&Aブティックとは、M&Aに関する業務をサポートする集団を指します。個人ではなく「集団」を指す点がM&Aアドバイザーと異なる点です。
業務内容は、戦略・スキームの策定やマッチングのサポートなど多岐にわたります。M&Aで悩みがある際に相談すれば、候補先を見つけやすくなる点や手続きがスムーズに進められる点がメリットです。
このコラムでは、M&Aブティックに依頼するメリットや気をつけるべき点、選び方などについて詳しく解説します。

M&Aブティックとは

M&Aブティックとは、M&Aをサポートする集団のひとつです。ここからは、ブティックの意味やM&Aアドバイザーとの違いについて解説します。

ブティックの意味

もともと、ブティック（boutique）は小規模な専門店や洋品店などを指す言葉です。また、ビジネスシーンにおいては主に、専門特化型の会社を意味します。
そのため、M&Aブティックは「M&A」を専門にする会社、集団などを意味することが一般的です。M&Aで困ったことがある際には、M&Aブティックに相談してアドバイスや支援を受けます。
なお、M&Aブティック・ファームも同じように使われる言葉です。ファーム（firm）は、会社や事務所のことを指します。

M&Aアドバイザーとの違い

M&AブティックとM&Aアドバイザーの主な違いは、組織で成り立っているか個人を指すかという点です。
M&Aアドバイザーとは、M&Aに関する業務についてアドバイスをしたり、M&Aの案件を取りまとめたりする専門家を指します。M&Aブティックはサービスを提供する「組織」であるのに対し、M&Aアドバイザーはその業務にあたる「人」です。

M&Aブティックの主な業務内容

M&Aブティックの主な業務内容は、以下のとおりです。

• M&Aの戦略やスキームを策定する
• 候補先を探す（マッチングサポート）
• 企業価値を評価する
• デューデリジェンスを実施する
• M&Aの交渉や契約をサポートする

各業務について解説します。

M&Aの戦略やスキームを策定する

M&Aを進めるための戦略を立てることが、M&Aブティックの業務のひとつです。
M&Aの経験がなければ、いきなり自社単独で戦略を立てることは難しいでしょう。M&Aブティックに相談すれば、自社のことを客観的な立場から分析したうえでのアドバイスを受けられます。
また、スキームを策定することも業務のひとつです。株式譲渡・株式分割・合併などさまざまな手法のなかから、依頼企業に適したものを提案します。

候補先を探す（マッチングサポート）

マッチングサポートも、M&Aブティックの業務です。売り手企業からの依頼に対しては買い手候補、買い手企業からの依頼に対しては売り手候補を探します。
候補先を探すにあたって、M&Aブティックが作成するのがロングリストやショートリストです。ロングリストはM&Aを検討する企業の希望を踏まえて作成するリスト、ショートリストはロングリストに掲載した企業を一定の条件に基づき候補先を絞り込み、あらためて作成したリストを指します。

企業価値を評価する

企業価値評価（バリュエーション）も、M&Aブティックの業務に含まれます。企業価値評価とは、M&Aなどの対象となる企業の価値を計算する作業のことです。
企業価値評価を進めるには、コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチといった評価方法を理解し、対象企業の状況に合った手法で評価しなければなりません。そのため、対象企業の種類や規模によっては自社で計算することが難しいでしょう。
専門知識を有するM&Aブティックに相談することにより、素早く適切に対象企業の価値を評価できます。

デューデリジェンスを実施する

デューデリジェンスの実施を手配・依頼することや、デューデリジェンスに関する体制を構築することも、M&Aブティックの業務です。デューデリジェンスとは、M&Aなどの対象となる企業の価値やリスクなどを調査する作業を指します。
デューデリジェンスの種類は、法的な問題点がないか確認する法務DD、過去の収益性や会計処理などを確認する財務DD、税務リスクがないか確認する税務DDなどさまざまです。一般的に、M&Aブティックは付き合いのある各分野の専門家にデューデリジェンス業務を依頼します。
士業がM&Aブティックを兼ねる場合は、自身で専門分野のデューデリジェンスを実施可能です。

M&Aの交渉や契約をサポートする

M&Aの交渉をサポートすることも、M&Aブティックの業務です。売り手と買い手の間に入ってそれぞれの要望を相手に伝えることで、スムーズに交渉を進められるようにします。
また、契約をサポートすることもM&Aブティックの業務です。M&Aを進める企業は、高度な法律知識が求められる契約書の作成業務をサポートしてもらうことで、法的リスクを軽減できます。

M&Aブティックに依頼することのメリット

M&Aを検討するにあたって、M&Aブティックに依頼することのメリットは、主に以下のとおりです。

• 候補先を見つけやすい
• M&Aの交渉や契約をスムーズに進められる

それぞれ解説します。

候補先を見つけやすい

M&Aブティックを利用することにより、候補先を見つけやすくなるでしょう。
M&Aを実行するためには、売り手は買い手候補、買い手は売り手候補を探さなければなりません。しかし、自社だけでは候補先としてピックアップできる企業に限りがあるでしょう。
M&Aブティックに相談すれば、今までの経験や知識、人脈などを駆使してM&Aのマッチングをサポートしてもらえます。

M&Aの交渉や契約をスムーズに進められる

M&Aの交渉や契約をスムーズに進められる点もメリットです。
M&Aを進めるには、法律・財務・税務・労務など、さまざまな知識が必要になります。M&Aブティックに依頼すれば、専門家にサポートしてもらえるため、自社に専門知識を有する人材がいなくても手続きを進められるでしょう。
また、相手方とトラブルが発生した場合にも、間に入って事態の収拾を図ってもらえる可能性があります。

M&Aブティックに依頼する際の注意点

M&Aブティックに依頼する際は、高額な費用がかかる可能性がある点に注意しましょう。
とくに、案件の規模が大きくなるほど金額は高くなる可能性が高いです。ただし、依頼するM&Aブティックが報酬体系としてレーマン方式を採用している場合は、取引金額が大きくなるにつれて「報酬率」自体は低くなります。
また、M&Aブティックに依頼したからといって、M&A成功につながるとは限らない点にも注意しましょう。成功につなげるためには、自社のニーズに応えてくれるM&Aブティックを見極めることが大切です。

M&Aブティック・ファームの種類

M&Aブティック（M&Aブティック・ファーム）の主な種類は、以下のとおりです。

• 金融機関（メガバンク・証券会社）
• 経営コンサルティングファーム・士業
• 外資系の投資銀行
• M&A仲介会社

各組織の特徴について、簡単に紹介します。

金融機関（メガバンク・証券会社）

メガバンクや証券会社などの金融機関が、M&Aブティックとしての役割を果たすことがあります。
メガバンクは、比較的規模の大きいM&A案件を手がける点が特徴です。また、M&Aにあたって必要な資金を融資することもあります。
証券会社は、メガバンクと同様に比較的規模の大きい案件を手がける点、今までに取り扱ってきた案件が多い点などが特徴です。

経営コンサルティングファーム・士業

経営コンサルティングファームがM&Aブティックとしての役割を果たす場合、デューデリジェンスに強い点が特徴です。ただし、費用や実績などが各ファームによって異なるため、見極めなければなりません。
士業もデューデリジェンスに強い点が特徴です。一般的に弁護士は法務DD、公認会計士は財務DD、税理士は財務DDや税務DDの役割を担います。

外資系の投資銀行

外資系の投資銀行がM&Aブティックとして、相談に乗る場合もあります。
外資系投資銀行の特徴は、主に国際間での取引（クロスボーダー案件）を手がける点です。そのため、主に海外事業を展開する大企業が、外国企業の買収を検討しているようなケースなどにおいて、外資系投資銀行にM&Aについて相談することがあります。

M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、M&Aで買い手と売り手の間に入り、中立的な立場で交渉や契約をサポートする会社です。
M&A仲介会社は、候補者探しに強い点が主な特徴としてあげられます。そのため、できるだけ早く売却・買収したいというニーズに応えられるでしょう。
なお、経営コンサルティングファームやM&A仲介会社などは、M&A後の統合作業（PMI）のサポートに対応している場合もあります。

M&Aブティックの選び方

M&Aブティックを選ぶ際は、料金が予算の範囲内か、サービス内容を考慮して納得できる料金かなどを確認することが大切です。M&Aブティックに支払う報酬が高ければ、M&Aに成功しても資金繰りの悪化につながる可能性があります。
また、M&Aブティックの業務や実績が自社の状況に合っているかチェックすることも大切です。ブティックによって得意分野や手がけてきた案件の規模が異なるため、慎重に選びましょう。

まとめ

M&Aブティックとは、「M&A」を専門にする会社、集団のことです。金融機関やM&A仲介会社などがM&Aブティックとしての役割を果たします。
M&Aブティックに依頼することの主なメリットは、候補先を見つけやすいことや交渉・契約をスムーズに進められることです。ただし、高額の費用がかかる可能性もあるため、サービス内容を考慮して納得できる料金のブティックを選択しましょう。
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