会社をたたむ費用はいくら?廃業手続きの流れも解説
会社をたたむ際には、登記費用や官報公告費用などのさまざまな費用がかかります。すべての手続きを自社で実施する場合登記費用や官報公告費用などで7万~8万円程度、設備・在庫の処分費用や事務所の原状回復費用なども含めると百万円単位の費用がかかることもあります。
このコラムでは、会社をたたむ費用についてわかりやすくまとめました。また、費用を抑える方法も解説します。
会社をたたむ費用に含まれるもの
会社をたたむときには、費用が発生します。主な費用項目と目安については、以下をご覧ください。
会社をたたむ費用一覧
項目 | 費用目安 |
---|---|
登記費用 |
・解散登記:30,000円 ・清算人登記:9,000円 ・清算結了登記:2,000円 |
官報公告費用 | 30,000~40,000円 |
設備・在庫の処分費用 | 処分する設備の種類や台数、在庫数による |
事務所・店舗の原状回復費用 | 坪当たり30,000~100,000円程度 |
専門家報酬 | 依頼業務量、種類によって数万~数十万円 |
株主総会開催費用 | 100,000~1,000,000円程度 |
登記費用
会社を設立するときにも登記手続きが必要ですが、解散するときにも必要です。解散登記費用として、30,000円かかります。
また、解散手続きの際に清算人登記費用が9,000円、清算結了登記費用が2,000円かかるため、登記費用は合計41,000円です。ただし、会社が所有している不動産を売却するときなどには、さらに登記費用がかかることもあります。
官報公告費用
会社を解散するときは、官報に公告を掲載しなくてはいけません。公告費用は行数によって異なりますが、解散時には11~12行程度の分量となり、費用は30,000~40,000円程度かかります。
設備・在庫の処分費用
会社には、さまざまな設備があります。事務所や工場、倉庫などを借りている場合なら、そのまま放置するわけにはいかないため処分が必要です。製造業や飲食業のように設備や機械が多い業種なら、処分費用も高額になると予想されます。同業者に引き取ってもらえないか声をかけるなどの方法も検討してみましょう。
なお、事業活動により生じた廃棄物は、家庭廃棄物のように自治体のごみ回収サービスを利用することはできません。ごみ回収サービスを利用して廃棄すると、不法投棄とみなされ罰則が科せられることもあるため注意が必要です。
また、在庫も処分しなくてはいけません。倉庫を借りて在庫を保管している場合なら、値下げをして売却するなど、早期に処分する方法を検討する必要があるでしょう。
事務所・店舗の原状回復費用
事務所や店舗を借りている場合は、借りた当初の状態にして返却する「原状回復義務」が課せられます。
内装を撤去し、元の状態に戻すには、坪当たり30,000~90,000円程度の費用が必要です。壁や天井も手を加えている場合は、スケルトン工事をしてからの原状回復となるため、さらに坪当たり100,000円程度の費用がかかることもあります。
専門家報酬
解散登記以外にも、清算事務や税務などのさまざまな手続きが必要です。税理士や司法書士といった専門家に業務を依頼する場合は、専門家報酬も見積もっておきましょう。
業務内容や会社の規模などによっても異なりますが、専門家報酬が数十万円程度かかることもあります。なお、専門家報酬は依頼先によって差があるため、複数の事務所から見積もりを取って比較するほうが良いでしょう。
株主総会開催費用
会社を解散する場合には、株主総会を開催して承認を受ける必要があります。株主総会開催のお知らせを送付する費用や会場を準備する費用なども発生するため、100,000~1,000,000円程度は見積もっておきましょう。
法人・個人事業主の廃業費用の違い
個人事業主の場合は法人とは異なり、事業を開始するときに商業登記をする必要がありません。そのため、廃業するときも登記関連の費用がかからないことが一般的です。
ただし、個人事業主であっても商号を登記している場合には、6,000円の登記廃止費用がかかります。法務局で手続きをしましょう。
また、法人解散時には株主総会で決議を得る必要があるため開催費用が発生しますが、個人事業主なら株主が存在しないため株主総会開催費用もかかりません。ただし、株主全員から書面や電磁的記録で同意を得られる場合には、法人であっても株主総会なしに解散決議をとれます。
法人・個人事業主の廃業費用の違い
項目 | 法人 | 個人事業主 |
---|---|---|
登記費用 | 必須 | 商号登記している場合のみ |
官報公告費用 | 必須 | 不要 |
設備・在庫の処分費用 | 業種によっては必要 | 業種によっては必要 |
事務所・店舗の原状回復費用 | 賃貸している場合は必要 | 賃貸している場合は必要 |
専門家報酬 | 依頼する場合は必要 | 依頼する場合は必要 |
株主総会開催費用 | 書面決議の場合は不要 | 不要 |
会社をたたむ手続きの流れ
会社をたたむ手続きは、以下の流れで進めていきます。
会社解散の流れ
- 営業終了日を決める
- 株主総会で解散決議をとる
- 解散登記・清算人登記
- 廃業届の提出
- 官報公告
- 財産の清算と確定申告
- 清算決算報告書の承認・清算結了登記
順に解説します。
1.営業終了日を決める
営業終了日が解散日となります。取引先や従業員との関係を終了するにはさまざまな手続きや対応が必要となるため、通常は解散を決意してから数ヶ月ほど先の日を設定します。
2.株主総会で解散決議をとる
株主総会で解散の決議をとります。解散は特別決議をとらなくてはいけません。過半数の議決権を持つ株主が参加した株主総会で、議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。
3.解散登記・清算人登記
株主総会で決議した日より2週間以内に、法務局で解散登記と清算人登記を実施します。書類の準備や手続きは、司法書士などの専門家に任せるとスムーズです。
4.廃業届の提出
次に、各所に廃業届を提出します。主な提出先は、以下をご覧ください。
廃業届の提出先
- 税務署
- 都道府県税事務所
- 労働基準監督署
- 日本年金機構
- ハローワーク
5.官報公告
会社解散と債権の申し出について、官報で公告しなくてはいけません。なお、公告掲載期間は2ヶ月以上です。また、債権者がいる場合には、個別に通知するようにしてください。
6.財産の清算と確定申告
財産を清算し、株主への分配分などを確定します。解散事業年度(事業年度開始日から解散日まで)の決算書類を作成し、確定申告をしましょう。
また、解散日までにすべての清算業務が終わらない場合は、解散日の翌日から1年間を1事業年度とみなし、清算事業や残余財産確定事業を実施してからそれぞれ確定申告が必要になります。
7.清算決算報告書の承認・清算結了登記
株主総会で清算決算報告書の承認を受け、承認日より2週間以内に法務局で清算結了登記の手続きを実施します。なお、解散決議とは時間差があるため、株主総会を少なくとも2回は開催しなくてはいけません。
会社をたたむ費用を抑える方法
廃業には、お金がかかります。経営不振などの事情により廃業するときには、費用の支払いが難しくなることもあるかもしれません。少しでも費用を抑えて廃業する方法を検討することが必要です。
たとえば、「設備や在庫の引き取り手を探す」「書面決議を実施して株主総会開催費用を抑える」などの方法も検討してみましょう。清算業務を社内で進め、専門家に依頼する業務を減らすことでも、会社をたたむ費用を抑えられます。
廃業ではなく、M&Aにより別企業に事業承継してもらう方法も検討してみましょう。事業をそのまま引き継いでもらうなら、設備や在庫の処分費用がかからなくなるだけでなく、事業売却による利益を得られることもあります。
たとえば、株式譲渡により会社そのものを売り手に引き継いでもらう場合は、取引先や従業員もすべて譲渡対象です。取引や雇用の継続が可能になるため、廃業よりも周囲に及ぼす影響を減らせるかもしれません。
まとめ
会社をたたむのは、簡単ではありません。登記や清算の手続きが必要になるだけでなく、株式会社として経営している場合なら何度か株主総会を開催する必要が生じることもあります。
また、会社をたたむときにはさまざまな費用がかさみます。登記や官報公告といった法律で定められた手続き関連の費用だけでなく、設備や在庫の処分費用、事務所・店舗の原状回復費用なども必要です。
費用を抑えるためにも、M&Aができないか検討してみましょう。会社を売却すれば設備・在庫をそのまま活かせるだけでなく、売却による利益を得られる可能性もあります。
会社をたたむ決断をする前に、まずはM&Aの専門家に相談するようにしてください。状況によっては、廃業よりもプラス面の多い道が見つかることもあります。
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