M&Aのショートリストとは?ロングリストとの違い・作り方も

M&Aを成功させるための重要な手順の1つに、ショートリストの作成があります。「M&Aを実施しようかな?」と悩んでいる方の中には、ショートリストについて知らない方もいるかもしれません。このコラムでは、M&Aにおけるショートリストの概要を解説し、作成のメリットや手順についてわかりやすく紹介します。
M&Aにおけるショートリストとは?
M&Aにおけるショートリストとは、M&Aの相手候補先を厳選して一覧にしたものです。あらかじめ作成しておくロングリストをもとに、事業内容や財務状況、強みといった相手の情報や、自社がM&Aによって達成したい目的などを考慮して絞り込みます。ショートリストに記載する候補先は5~10社程度が一般的です。
ショートリストを作成する目的
ショートリストを作成する目的は、数多くの対象から有力な候補先を効率的に選ぶことです。ショートリストで候補先を絞り込んだあとは、アプローチをして合意形成のための面談に進みます。M&Aをスムーズに進めるためには、ショートリストを作成する段階で候補先を厳選することが必要です。
ショートリストの作成は、仲介会社や専門家に任せられることもあります。しかし、M&Aを成功させるためにはショートリストの作成に経営者も関与することが大切です。自社との相性や相手の状況を経営者自身が確認することで、より有力な候補先を選定できます。
ショートリストの記載事項
ショートリストには、候補先の名称とともに以下の情報を記載することが一般的です。
- 事業内容
- 製品ブランド力
- 技術力・ノウハウ
- 地域におけるシェア
- 役員構成
- 財務状況
- 強み・弱み
- 期待できるシナジー効果
- 取引銀行
- 主要取引先
- 株価
- 価値観
- 成長性
- 競争優位性
- リスク など
上記のすべてをショートリストに記載する必要はありません。自社が重視する項目をショートリストに記載します。
ショートリストとロングリストの違い
一般的に、ショートリストの前にロングリストを作成します。ロングリストとは、候補となりうる相手を網羅的・表面的にピックアップしたものです。ロングリストでは、数十社~100社ほどのリストとなることも少なくありません。
ロングリストの作成は、自社にとって有益となる見込みがある企業をピックアップし、該当しない企業を外すプロセスです。M&Aを希望する企業の匿名情報であるノンネームシートを使いながら選定していくことが一般的です。ロングリストには次のような情報を記載します。
- 会社名
- 代表者名
- 住所
- 事業概要
- 担当者・連絡先
- ホームページのURL
- 資本金
- 沿革
- 従業員数 など
一方ショートリストの作成は、ロングリストの中からとくに有力な相手を5~10社ほど選ぶプロセスです。
ショートリストを作成するメリット
ショートリスト作成のメリットには、次のものがあげられます。
- 適切な相手候補を効率的に絞れる
- M&A成立後の具体的なイメージを描ける
- M&A成立に向けての戦略を立てられる
それぞれのメリットについて、以下でみていきましょう。
適切な相手候補を効率的に絞れる
ロングリストでピックアップした企業をさらに厳選してショートリストを作ることで、効率的に候補先の絞り込みができます。
自社にとって魅力的な企業や自社にマッチする企業、M&Aの成立可能性が高い企業などを、膨大な企業の中から探すためには手間がかかります。闇雲に探すのではなく、ロングリストの作成、ショートリストの作成と段階を踏んで絞ることで、ポイントを押さえながら効率よく候補先を絞れるでしょう。
M&A成立後の具体的なイメージを描ける
ショートリストの作成によって候補先を絞ることで、その相手とM&Aが成立した場合のイメージができます。
ショートリストを作成する際は、候補の強みや事業内容、シナジー効果なども記載します。こうした点を考慮することで、M&Aが成立したあとにどのような状態を目指せるのか、どのようなプランで両社を統合させるかなどをイメージできるでしょう。
M&A成立に向けての戦略を立てられる
ショートリストを作ることで候補先に関する情報が整理され、M&Aを成立させるための戦略が立てやすくなります。どの点がアピールポイントとなるか、どのようにアプローチすればよいかなどについて具体的に検討できるようになる点も、メリットの1つです。
ショートリストの作成手順
ショートリストを作成する基本的な手順は次のとおりです。
- 自社の強みと弱みを客観的に分析する
- M&Aの目的を定める
- 目的ごとに適した相手候補をピックアップする
- 相手候補をさらに絞り込む
それぞれの手順について、以下で詳しくみていきましょう。
1.自社の強みと弱みを客観的に分析する
まずは自社について客観的に分析しましょう。自社の強みや弱みを把握すると、以下のような点を考えやすくなります。
- どのような企業とのM&Aが適しているか?
- 自社の強みを生かせる・弱みをカバーできる相手候補はどのような企業か?
- M&Aの交渉時に相手候補にアピールできる魅力は何か?
社内だけで分析することが難しければ、仲介会社や専門家に協力を仰ぐことも選択肢の1つです。客観的な視点から自社を見直すことで、これまで気づいていなかった強みやアピールポイント、リスクなどが見つかる可能性があります。
2.M&Aの目的を定める
次に、何を目的としてM&Aを行うのかを明確にしましょう。M&Aの主な目的には、次のものがあげられます。
- 経営資源の獲得
- シナジー効果の獲得
- 経営の安定化
- 成長企業への投資
M&Aの目的をはっきりさせることで適切な候補先をピックアップできるため、成功を目指せます。
目的を明確にするほか、候補先についての次の情報も整理しておきましょう。
- 経営方針
- 理念・ビジョン
- 株主・取引先・顧客との関係性
- 特許・技術・ノウハウ
- 組織体制
- 労働環境
- リスク など
候補先の情報を事前に整理しておくことで、自社との相性を見極めやすくなります。より納得のいく候補選びにつながるでしょう。
3.目的ごとに適した相手候補をピックアップする
目的を達成するためにどのような候補先を選べばよいのかを考慮し、候補を絞りましょう。
ショートリストを作る時点では、M&Aの目的を1つに絞れない場合もあります。複数の目的が考えられる場合は、目的ごとに適した相手をピックアップしましょう。
4.相手候補をさらに絞り込む
目的に優先順位をつけ、候補先をさらに厳選します。
ショートリストに記載した情報を参考に、自社にとってよりプラスとなる相手はどの企業か検討しましょう。加えて、M&A成立の可能性や取引金額を考慮して考えることも大切です。
ショートリスト作成時のポイント
ショートリストを作成する際は、次のポイントを押さえておきましょう。
- 情報漏えいを防止する
- 目的の優先順位を明確にする
- 客観的に判断する
それぞれのポイントについて、以下で解説します。
情報漏えいを防止する
ショートリストに記載する情報は、外部に漏れることのないように注意しましょう。ショートリストには、財務状況や取引先、売上高などの機密情報が含まれます。公開した情報が漏えいしてしまうと信用を失い、M&Aの不成立を招くことも考えられます。
情報漏えいを防ぐために、相手候補や仲介会社・専門家と秘密保持契約を締結したうえでM&Aを進めることが一般的です。
加えて、特定の企業に自社がM&Aを検討していることを知られたくない場合は、ショートリストに入れないように注意しましょう。
目的の優先順位を明確にする
ショートリストを作成する際に、何を目的にM&Aを行うのかをはっきりさせておくことで、M&Aの成功を目指せます。M&Aによって何を達成したいのかを明確にしておけば、候補先に求めるものも明確になり、より効率的にショートリストを作成できます。
M&Aを行うこと自体は目的ではなく、単なる手段です。目的の優先順位がわからない、曖昧であるという場合は、そもそもM&Aという手段が適しているのかも含めて考える必要があります。
客観的に判断する
ショートリストを作る段階では、好みや主観は入れず客観的に判断しましょう。
最終的に候補先を1社に絞る段階であれば、主観的な考えを反映させることも必要です。しかし、より効果的なM&Aを実現するには、自社にとっての利益を優先的に考えてショートリストを作ることが大切です。
まとめ
ショートリストとは、M&Aの相手候補の細かい情報を把握し、5~10社程度に絞り込んだリストです。ロングリストによって候補先を網羅的にピックアップしたのち、ショートリストを作る段階でさらに絞り込みます。ロングリストとショートリストをそれぞれ作成することで、候補先を効率的に厳選できます。M&A成立後のプランや、アピールの戦略を立てるためにも役立つでしょう。
「ショートリストやロングリストをどのように作ればよいのか教えてほしい」「専門家の力を借りたい」という方は、M&Aの実績や経験を有する専門家へ相談してください。
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