M&Aにおけるソーシングとは?意味やプロセスをわかりやすく解説

M&Aにおけるソーシングとは、対象企業を選定したり交渉したりするなどのプロセスを指します。プッシュ型は自ら積極的に働きかける点、プル型はM&A仲介などを利用する点が特徴です。
このコラムでは、M&Aにおけるソーシングの流れや、各ソーシングのメリットとデメリットなどについて解説します。ソーシング以外のプロセスも紹介しているので、M&Aに関心のある方はぜひ参考にしてください。
M&Aのソーシングとは
M&Aのソーシングとは、M&Aにおけるプロセスの1つを指します。
そもそも、ソーシング(sourcing)とは「部品調達」や「調達先を選定すること」などを意味する言葉です。M&Aにおいては、対象企業の選定やニーズの掘り起こし、交渉などの一連の流れに対して使います。
ソーシングは、M&Aをスムーズに進めて成功に導くうえで大切なプロセスです。
M&Aにおけるソーシングの流れ
M&Aにおけるソーシングの流れは、以下のとおりです。
- M&Aの目的や希望条件を明確にする
- 候補先に関する情報を集める
- ロングリスト・ショートリストを作成する
- 候補先と交渉を始める
それぞれ解説します。
M&Aの目的や希望条件を明確にする
ソーシングでは、まずM&Aの目的を明確にすることが大切です。なぜ自社がM&Aをする必要があるのかを考えましょう。
たとえば、売り手であれば「後継者不在の問題を解消する」「廃業を回避することで従業員の雇用を継続する」などが目的としてあげられます。一方、買い手の目的は「新規事業に参入する」「ノウハウやリソースを獲得する」などです。
また、候補先をスムーズに絞り込めるように、M&Aの相手に何を求めるのかも明確にしておきましょう。
候補先に関する情報を集める
M&Aの目的や希望条件を踏まえ、候補先に関する情報を集めます。
最初は1社に絞らず、条件を満たす企業をいくつかピックアップすることが一般的です。たとえば、従業員の雇用継続を目的に買い手を探すのであれば、人手不足に悩んでいる企業や新規採用に積極的な企業などを調べます。
また、M&Aの成功に向けて、自社が属する業界や取り巻く環境の情報についても調べておくとよいでしょう。
ロングリスト・ショートリストを作成する
自社のニーズを満たしそうな候補企業について調べたら、ロングリストとショートリストを作成します。
ロングリストとは、M&Aの候補企業を漏れなくリストに加え、業種・事業内容・事業規模などを盛り込んだリストのことです。一方のショートリストは、ロングリストのなかからより自社の求める条件を満たしそうな企業を10社程度ピックアップしたリストを指します。
候補先と交渉を始める
候補先を絞り込んだら、具体的な交渉を開始します。従業員のモチベーションに影響するため、交渉時はM&Aに関する情報を知られないよう注意を払いましょう。
また、取引先に事前にM&Aの情報が知られることで信用低下や取引中止に至ったり、取引金融機関に知られて融資を受けにくくなったりすることもありえます。外部への情報流出を防ぐためにも、候補先と交渉する際は秘密保持契約(NDA・CA)を締結することが重要です。
M&Aのソーシング方法
M&Aのソーシングには、プッシュ型・プル型があります。
プッシュ型ソーシングとは、自らM&Aの候補を探して交渉を進めていく手法です。自社のネットワークを活用しつつ、候補先をピックアップします。
それに対して、プル型ソーシングとは外部のサポートを受けながらソーシングを進める手法です。M&A仲介などに候補企業の情報を調べてもらったり、案件を紹介してもらったりします。
プッシュ型ソーシングを選択するメリットとデメリット
プッシュ型ソーシングとプル型ソーシングのどちらを選択すべきか迷った場合は、それぞれのメリットとデメリットを比較するとよいでしょう。まずは、プッシュ型のメリットとデメリットを解説します。
プッシュ型ソーシングのメリット
プッシュ型ソーシングを選択するメリットは、M&Aにかかるコストを抑えられる点です。自ら積極的に動く分、専門家に支払う報酬や手数料がかかりません。
また、第三者を介さずに直接相手側と交渉できる分、すぐに話をまとめられる可能性がある点もメリットです。そのため、すでに相手との話し合いがある程度まとまっていて、すぐに合意したい場合に用いることがあります。
プッシュ型ソーシングのデメリット
プッシュ型ソーシングのデメリットは、自社で幅広いネットワークを有していない限り、候補先を見つけることが困難な点です。
直接交渉してすぐに話をまとめやすいと言っても、そもそも候補先がいなければ、M&Aは進められません。より自社のニーズを満たす企業が隣接する都道府県にあるにもかかわらず、近場の情報しか得られず見落とすこともあるでしょう。
また、M&Aではさまざまな専門知識を必要とする場面があります。コストを節約するために専門家に相談せず自社で進めたことにより、後にトラブルや損失の発生につながる可能性がある点もデメリットです。
プル型ソーシングを選択するメリットとデメリット
ここから、プル型ソーシングを選択するメリットとデメリットを紹介します。
プル型ソーシングのメリット
プル型ソーシングのメリットは、専門家にサポートしてもらえる分、手間を省ける点です。M&Aにおいて必要な手順を失念するリスクも軽減できるでしょう。
また、幅広い企業のなかから選定できる点もプル型ソーシングを選択するメリットです。膨大なリストのなかから候補先を絞り込むことで、目的や希望条件に合致する企業を見つけやすくなります。
プル型ソーシングのデメリット
プル型ソーシングのデメリットは、コストが発生する点です。ただし、専門家に相談することで手間を省けることやトラブルにあうリスクを軽減できることを考慮すると、必ずしもコストが無駄になるとは限りません。
また、自社の目的や条件について正しく伝える必要がある点にも注意が必要です。第三者を介す分、自社が意図しているのとは異なる条件で候補先を選定される可能性があります。
プル型ソーシングを選択する際のポイント
M&Aをスムーズに進めるためにプル型ソーシングを選択する際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 自社の強み・弱みを明確にしておく
- 業種や規模にあった業者に依頼する
- 手数料を比較する
各ポイントについて、解説します。
自社の強み・弱みを明確にしておく
プル型ソーシングを選択するうえでは、自社の強みと弱みを明確にしておくことがポイントです。ソーシングを依頼する業者に情報を正しく伝えることによって、自社の意図と異なる候補先を選定される可能性を軽減できます。
また、交渉段階で相手側から自社の特徴を詳しく尋ねられることもあるでしょう。あらかじめ資料を用意しておけば、相手に説明できます。
なお、弱みがある場合も隠さずに伝えることが大切です。誠実に対応することで、相手に好印象を与えられます。
業種や規模にあった業者に依頼する
プル型ソーシングを選択する際は、自社の業種や規模にあった業者に依頼することもポイントです。
M&Aの専門家でも、分野によって得意・不得意があります。自社が属する業界におけるM&Aの経験や実績がある業者に依頼することで、成功確率を高められるでしょう。また、特定の業界で顔が広ければ、その分より多くの候補先をピックアップできる可能性があります。
手数料を比較する
プル型ソーシングを利用する際は、あらかじめ各業者の手数料を比較するとよいでしょう。
M&A関連の業務を外部に依頼する場合、企業価値算定費用・着手金・月額報酬・中間報酬・成功報酬などの手数料がかかることがあります。どの手数料が発生するかは、業者によってさまざまです。
あらかじめどの手数料がかかるかを把握しておくことで、M&A実施時に予期せぬコストが発生することを防げます。
ソーシング以外のM&Aプロセス
以下も、M&Aにおけるプロセスを指す言葉です。
- オリジネーション(origination)
- エクゼキューション(execution)
それぞれの概要を説明します。
オリジネーション
オリジネーション(origination)は、もともと「始まり」や「発祥」などを意味する言葉です。M&Aでは、案件を発掘し、相手に打診して交渉を始めるプロセスを指します。
ソーシングもオリジネーションも、基本的にM&Aにおける初期段階のプロセスとして同じように使われる言葉です。ただし、状況によってはソーシングを案件発掘段階、オリジネーションをその後のマッチング段階や希望条件の提示段階に使う言葉として区別することもあります。
エクゼキューション
本来、エクゼキューション(execution)は、「実行」や「履行」などを意味する言葉です。M&Aにおいては、M&Aの手続きからクロージングまでのプロセスを指します。
エクゼキューション段階ですることの具体例は、デューデリジェンス・最終契約書の締結・クロージングなどです。ソーシングやオリジネーションと同様に専門知識を問われるため、専門家に相談することを検討しましょう。
まとめ
M&Aのソーシングとは、対象企業の選定やニーズの掘り起こし、交渉などの一連の流れを指す言葉です。プッシュ型ソーシングとプル型ソーシングがあります。
自社だけで候補先を探すことが難しい場合や、専門知識や経験がなくM&Aを進めることに不安を抱えている場合は、プル型ソーシングを選択するとよいでしょう。ただし、業者に依頼する際にコストがかかるため、具体的にどのようなコストが発生するのか確認することが大切です。
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