カーブアウトとは?M&Aにおける意味やメリット、スピンオフとの違いを解説

M&Aにおけるカーブアウトとは、主に子会社や事業の一部を切り出して売却し、独立させることです。
カーブアウトを実施することによるメリットには、母体会社が売却収入を得られる点や収益性の改善を図れる点などがあげられます。一方で、スタンドアローン・イシューが生じうる点はデメリットといえるでしょう。
このコラムでは、カーブアウトの意味やスピンオフとの違い、手順について解説します。
M&Aにおけるカーブアウトとは
元々、カーブアウト(carve out)は「全体から一部を切り出す」ことなどを意味します。また、M&Aにおいては、カーブアウトを主に「子会社や事業の一部を切り出して売却し、独立させること」の意味で使うことが一般的です。
ここから、カーブアウトが注目を集める理由や、M&Aでカーブアウトを実現する方法について解説します。
カーブアウトが注目を集める理由
「選択と集中」につながることが、カーブアウトが注目を集めている理由としてあげられます。選択と集中とは、経営の効率化を目指し、多角化経営から特定の事業分野に経営資源を集中する方針に転換することです。
人手不足の深刻化や激しい国際競争などを理由に、近年国内企業は経営の効率化や事業再編を進める必要が生じています。カーブアウトは、このような動きを推進するにあたって有効な手段の1つなのです。
経済産業省が事業ポートフォリオの見直しや事業再編の実行について必要な手段をまとめた「事業再編実務指針〜事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~(事業再編ガイドライン)」にも、カーブアウトに関する記述があります。
そのほか、カーブアウトで新規事業を独立させることにより、意思決定をスムーズにすることも、注目を集める理由です。
参考: 経済産業省「「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~(事業再編ガイドライン)」(令和2年策定)」
M&Aでカーブアウトを実現するための手法
M&Aでカーブアウトを実現するための手法は、主に以下のとおりです。
- 事業譲渡
- 会社分割
- (子会社の)株式譲渡
事業譲渡とは、企業が事業の一部もしくは全部をほかの企業に売却することを指します。自社の経営権は渡さず、あくまで対象事業に関する資産や負債を譲渡する点が事業譲渡の特徴です。
会社分割とは、企業が自社の一部もしくは全部の事業を切り離し、ほかの企業に承継させることを指します。事業譲渡では、相手方と話し合い資産・負債・契約を個別に移すのに対し、会社分割では対象事業の資産・負債・契約を包括的に移転させる点がポイントです。
子会社の株式譲渡は、自社が保有する子会社の株式をほかの企業に売却することを指します。
カーブアウトとスピンオフ・スピンアウトの違い
スピンオフやスピンアウトは、カーブアウトの一種と理解されることが一般的です。
また、スピンオフとスピンアウトの異なる点として、母体会社と切り出す会社の関係があげられます。一般的に、スピンオフ(Spin-off)は母体会社が新会社(切り出した先)の株式を保有することで資本関係が継続するのに対し、スピンアウト(Spin-out)では母体会社との間の資本関係が切れるため、新会社は完全に独立する点が特徴です。
カーブアウトのメリット
カーブアウトの主なメリットは、以下のとおりです。
- 売却収入を得られる
- 赤字事業を売却して収益性の改善を図れる
- 独立させた事業の成長を期待できる
各メリットについて、詳しく解説します。
【母体会社】売却収入を得られる
母体会社は、カーブアウトを選択することにより売却収入を得られる点がメリットです。売却で多額の現金を得られれば、資金繰りの安定化を図れます。
特に、買い手から対象事業を高く評価されていれば、その分高額で売買できる可能性が高いです。ただし、赤字事業を譲渡する場合や、多額の負債も含めての譲渡を望む場合は、売り手の希望価格で話をまとめることが困難なことがあります。
【母体会社】赤字事業を売却して収益性の改善を図れる
売却相手が見つかれば、赤字事業を売却することにより収益性の改善を図れる点がメリットです。
自社では今後も赤字事業を黒字に転換する見通しが立たない場合、そのまま対象の事業を続けていると会社全体の収益を圧迫します。ほかの事業は好調でも、赤字事業が足を引っ張ることにより会社自体が赤字に転落することもあるでしょう。
そこで、赤字事業を切り離し、余裕ができた分の経営資源を収益の高い事業に集中させれば、会社全体の収益性を向上させられます。
【母体会社・新会社】独立させた事業の成長を期待できる
母体会社にとっても、新会社にとっても、独立させた事業の成長を期待できる点がメリットです。
切り離されて独立した事業を営む新会社は、ほかの会社から資金調達したり、ノウハウや人材を受け入れたりする選択肢が増えます。その結果、母体会社の元ではできなかったことを積極的に進めて、成長できる可能性が出てくるでしょう。
また、新会社は今まで母体会社に確認していた工程を省くことにより、事業をスムーズに展開できます。
カーブアウトのデメリット
カーブアウトを実施する主なデメリットは、以下のとおりです。
- スタンドアローン・イシューが発生する
- 従業員が離れる可能性がある
- 許認可や契約を引き継げない場合がある
- 経営の自由度が低下する可能性がある
それぞれ解説します。
【母体会社・新会社】スタンドアローン・イシューが発生する
母体会社も新会社も、スタンドアローン・イシュー(Stand Alone Issue)が発生する点がカーブアウトのデメリットとしてあげられます。スタンドアローン・イシューとは、会社や事業が親会社・グループから切り離されて単独で事業を進めるにあたって発生する問題のことです。
まず、母体会社から分離するにあたっては、システムを切り替えたり、ブランド・ロゴを変更したりしてコストが発生することがあります。
また、新会社は、母体会社から運営のためのサービス・サポートを受けられなくなるでしょう。たとえば、今まで母体会社の施設内にオフィスを設けていた場合は、新たにスペースを探さなければなりません。
さらに、母体会社と共同で仕入れてコストを落とすなどのシナジー効果を得られなくなる場合もあります。
【新会社】従業員が離れる可能性がある
新会社は、従業員が離れる可能性がある点がデメリットです。
カーブアウトに伴い意図せず新会社に移ることになった従業員は、組織風土や経営方針が変わったことに戸惑い、退職する可能性があります。新会社の戦力として見込んでいた優秀な従業員が離脱すると、期待していたように事業を進められません。退職まで至らなくても、カーブアウトに対して不満がある従業員は会社に対して不信感を抱き、モチベーション低下につながります。
なお、新会社に優秀な従業員が移る場合は、母体会社にとってもデメリットになりえるでしょう。
【新会社】許認可や契約を引き継げない場合がある
新会社は、内容や用いる手法次第で許認可や契約を引き継げないことがある点がデメリットとしてあげられます。
たとえば、事業譲渡では、契約を引き継ぐために個別承継の手続きが必要です。そのため、M&Aの当事者が契約の引き継ぎに同意していても、個別契約の相手方が引き継ぎに納得しなければ契約を承継できません。
また、カーブアウトの手法として会社分割を用いる場合は、原則として許認可を引き継げるのに対し、事業譲渡の場合は手続きが複雑になる点も重要です。
【新会社】経営の自由度が低下する可能性がある
新会社は、経営の自由度が低下する可能性がある点もカーブアウトのデメリットです。
カーブアウト実施後に新たに別の会社から資金調達をすることにより、その会社からの出資比率が増えると、意思決定が煩雑になる可能性があります。
意思決定をスムーズにするために、カーブアウトを実施する場合はその後の出資比率のことも十分に考えておかなければなりません。
カーブアウトを実施する際の流れ
一般的に、カーブアウトは以下の流れで進められます。
- 手法や方針を決定する
- スケジュール策定や対象事業の調査を進める
- 売却先を選定して交渉する
- 契約や決済などを実施する
各手順でする具体的な内容について、確認していきましょう。
1. 手法や方針を決定する
カーブアウトを検討するにあたって、用いる手法を決めましょう。権利関係をどのように引き継ぐのかなどを踏まえて、事業譲渡・会社分割・子会社の株式譲渡といった、いずれのスキームを用いるのかを考えます。
また、基本方針や譲渡の範囲も決めておかなければなりません。従業員はどうするのか、どこまでの資産・負債を引き継ぐのかなどを考えましょう。
2. スケジュール策定や対象事業の調査を進める
スキームや方針が決まったら、スケジュールを策定します。スキームによっては株主総会の決議が必要なため、無理のない日程を考えることがポイントです。
また、対象事業の調査も進めなければなりません。事業の課題や問題点が発覚した場合には、交渉時に相手に正直に伝えることでのちにトラブルが発生することを防げます。
さらに、売買価格を決める際の判断材料となるため、カーブアウトの対象となる事業の貸借対照表や損益計算書を作成しておきましょう。
3. 売却先を選定して交渉する
対象事業の調査が進んだら、売却先を選定して交渉を始めます。対象事業とのシナジー効果が期待できる相手を見つけられれば、交渉がスムーズにまとまりやすいです。
また、候補先が見つからない場合は、M&A仲介などの専門家に相談することも検討しましょう。M&A仲介は、売り手と買い手の間に立ち、中立的な立場で交渉や手続きをサポートする業者です。
4. 契約や決済などを実施する
売却先との交渉がまとまったら、スキームに応じた契約を締結し、決済などを実施しましょう。カーブアウト実施後の懸念点がある場合は、相手と交渉して契約書に明記しておくことが大切です。
なお、有価証券の投資判断に重要な影響を与えるため、特に上場会社はカーブアウトに関する情報を適時開示しなければなりません。一般的に、契約を締結したタイミングで投資家に開示します。
まとめ
カーブアウトとは、主に「子会社や事業の一部を切り出して売却し、独立させること」です。選択と集中につながったり、経営の意思決定をスムーズにさせたりできるため、近年注目を集めています。
カーブアウトをM&Aで実施するには、事業譲渡・会社分割・子会社の株式譲渡といったスキームを用いることが一般的です。M&Aに関する専門知識がなく不安な場合や、M&Aの相手先が見つからない場合は、M&A仲介などの専門家に相談するとよいでしょう。
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