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商法と会社法の違いとは?M&Aとの関連や法改正の内容も解説

投稿日:2025年04月17日
商法と会社法の違いとは?M&Aとの関連や法改正の内容も解説

商法と会社法の主な違いとして、「どのような対象に適用されるか」「両者が重なる場合にどちらが優先されるか」という点があげられます。商法は利益目的の取引を継続的・反復的に実施する人全てが対象となるのに対し、会社法は会社を対象にした法律です。
このコラムでは、商法と会社法の違いや各法律とM&Aとの関係、近年の法改正について解説します。

目次

商法と会社法の違い

商法と会社法の主な違いには、以下の点があげられます。

  • 適用の対象
  • 適用する順番

それぞれ解説します。

適用の対象

商法と会社法では、法律を適用する対象が異なります。
商法の対象は、自らが法律の権利義務の帰属主体となって、利益目的の取引を継続的・反復的に実施する人すべてです。そのため、商法は株式会社を対象とすることもあれば、個人事業主を対象とすることもあります。
それに対して、会社法の適用対象は「会社」のみです。つまり、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社・(有限会社)に対して、会社法が適用されます。

適用する順番

重複した際の適用する順番も、商法と会社法で異なる点です。
法律には、一般法と特別法があります。一般法はある項目について広く一般的に規定した法律のことで、特別法とは人・地域・条件など特定のケースに限定して一般法と異なる扱いを定めた法律のことです。
一般法と特別法が重なる場面では、「特別法優先の原理」で特別法を優先的に適用します。一般法が適用されるのは、特別法と矛盾しない部分のみです。
商法と会社法について考えると、商法が一般法、会社法が特別法に該当します。そのため、商法と会社法が重なる場面では、会社法を優先して適用する点がポイントです。
たとえば、一般法である商法の第11条第2項には、商人が商号の登記を「できる」旨が定められています。一方、特別法である会社法の第911条第3項などには商号や目的などの登記を「しなければならない」旨が定められているため、会社の場合は登記が義務です。
なお、民法と商法の関係では、民法が一般法で商法が特別法にあたります。つまり、会社法・商法・民法の順番で適用しなければなりません。

参考:e-Gov 法令検索「商法第十一条」
参考:e-Gov 法令検索「会社法第九百十一条」

商法とは

商法とは、商人の商業行為など、商事(商売)に関する基本的な決まりを定めた法律です。ここから、商法の歴史や使われている主な用語(商人・商行為)、条文の内容について解説します。

商法の歴史

商法(旧商法)が誕生したのは、明治時代です。ドイツ人法学者ロエスレルの草案などを参考にして、1064条から成り立つ商法が1890年に公布(国民に周知すること)されました。日本で初めて会社に関する内容を法制化したのが、この法律です。
しかし、実業界を中心に反対意見が多かったため、すぐに施行(効力が生じること)はされませんでした。その後、公布した商法を全面的に見直し、1899年に施行されています。このときに施行された商法が、現在適用される商法の基となるものです。

商法で使われる主な用語

商人とは、自分が法律の権利義務の主体となり、営利目的で業務や取引をする人や会社などのことです。ただし、店舗で物品販売する場合や鉱業を営む場合、商行為をしていなくても商人とみなされることがあります。
商行為とは、商業活動における法律上の行為のことです。商行為には、営業にかかわらない「絶対的商行為」、営業としてする行為の「営業的商行為」、営業のためにする行為の「附属的商行為」の3種類があります。

参考:e-Gov 法令検索「商法第四条」
参考:国税庁「営業の意義」

商法に掲載されている内容

2025年3月現在、商法には以下の3編が掲載されています。

  1. 総則(第1〜7章、第1〜500条)
  2. 商行為(第1〜9章、第501〜683条)
  3. 海商(第1〜8章、第684〜850条)

総則に主に記載されているのは、通則や商人の定義、商業登記の効力などです。また、商行為には売買や仲立営業・問屋営業などについて記載されています。
海商とは、海運業のように海での商行為のことです。海商の項目には、船舶の所有や海上保険などに関する規定があります。

会社法とは

会社法とは、会社の設立や組織、管理などについて定めた法律のことです。会社法の歴史や会社法で使われている主な用語(社員・株式会社)、掲載されている内容について解説します。

会社法の歴史

会社法は、商法のなかの会社に関する部分と有限会社法と商法特例法などを1つに統合し、新たに誕生した法律です。2005年7月に公布、2006年5月に施行されました。
施行に伴い最低資本金制度が撤廃されたことにより、1円でも恒久的に会社を設立できるようになった点が特徴です。また、有限会社を新たに設立できなくなる一方で、合同会社の設立が新たに認められました。

会社法で使われる主な用語

会社法における社員とは、株主のように会社に出資している人のことです。一般的な会話で使われる従業員の意味とは異なる点に注意しましょう。
また、株式会社とは、会社を所有する株主と経営を担う取締役が分離している会社のことです。一方、合名会社・合資会社・合同会社のように所有と経営が同一の会社を持分会社と呼びます。

会社法に掲載されている内容

2025年3月現在、会社法には以下の8編が掲載されています。

  1. 総則(第1〜4章、第1〜24条)
  2. 株式会社(第1〜9章、第25〜574条)
  3. 持分会社(第1〜7章、第575〜675条)
  4. 社債(第1〜3章、第676〜742条)
  5. 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付(第1〜5章、第743〜816条の10)
  6. 外国会社(第817〜823条)
  7. 雑則(第1〜5章、第824〜959条)
  8. 罰則(第960〜979条)

たとえば、総則には会社の商号や使用人に関する決まりが記載されています。また、株式会社・持分会社は、主に各会社の設立方法や会計方法などを記載した項目です。

商法・会社法がM&Aに関連する主な場面

商法や会社法がM&Aに関連する主な場面は、以下のとおりです。

  • 個人事業主が事業譲渡する場面
  • 株式譲渡・株式交換・合併・分割などを実施する場面

M&A(合併と買収)とは、複数の会社が1つになったり、ある会社が別の会社を買ったりすることです。事業譲渡・株式譲渡・株式交換・合併・分割などの手法があります。
ここから、M&Aの際に商法・会社法を適用する場面について確認していきましょう。

【商法】個人事業主が事業譲渡する場面

個人事業主が事業譲渡する場面で、商法を適用することがあります。事業譲渡とは、売り手が事業の一部もしくは全部を譲渡し、対価を受けとるM&Aのスキームです。
たとえば、商法第16条には営業譲渡人の競業を禁じた規定があります。そのため、個人事業主が事業譲渡した場合は、原則として20年間同一の市町村の区域内や隣接する市町村の区域内で営業できません。
会社の事業譲渡については、同様の趣旨の会社法第21条が適用されます。

参考:e-Gov 法令検索「商法第十六条」
参考:e-Gov 法令検索「会社法第二十一条」

【会社法】株式譲渡・株式交換・合併・分割などを実施する場面

株式譲渡・株式交換・合併・分割などを実施する場面において、会社法の条文を参照することがあります。
株式譲渡とは、自社の株式を購入する相手に経営権を譲渡する手法です。また、株式交換は対象会社の全株式を取得する代わりに、自社の株式を対象会社の株主に割り当てる手法を指します。
合併とは、複数の会社が1つになるM&Aの手法です。存続する会社が消滅する会社の権利義務を引き継ぐ吸収合併と、新たに設立する会社が消滅する会社の権利義務を引き継ぐ新設合併があります。
(会社)分割とは、会社の事業の一部もしくはすべてを切り出し、ほかの会社に承継させることです。既存の会社が引き継ぐ吸収分割と、新たに設立した会社が引き継ぐ新設分割があります。
たとえば、合併に関する記載があるのは、第5編の第1章です。また、会社分割については、同編の第2章で規定されています。

商法・会社法の近年の改正内容

商法も会社法も、近年重要な改正がありました。ここから、それぞれ近年の主な改正内容について解説します。

商法の改正内容

2018年に商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律が成立し、2019年4月より施行されました。日本で商法が施行されて以降、およそ120年ぶりの改正に当たります。
改正の主な目的は、商法の表記を片仮名・文語体から平仮名・口語体にあらためることと、社会経済情勢の変化に対応して運送や海商法制の現代化を図ることです。従来、商法に航空運送や陸・海・空を組み合わせた運送(複合運送)に関する規定がなかったため、改正に伴い新たに新設されました(第2編第8章運送営業)。

会社法の改正内容

2019年に会社法の一部を改正する法律が成立し、2021年3月と2022年9月より施行されています。
主な改正内容は、株主に対して株主総会資料を電子で提供できる制度を創設したこと、株主が同一の株主総会で提案できる議案数を制限したことなどです。また、日本の資本市場を全体として信頼できる環境に整えるため、上場会社などに社外取締役を設置することが義務づけられました。

商法・会社法に関して正しい知識を得る方法

テキストを読んだり、オンライン学習サービスを視聴したりすることで、商法・会社法に関する知識を身につけられます。
しかし、膨大な条文が存在するため、すぐに習得することは難しいでしょう。また、M&Aに関する手続きを進めるには、法律に関する知識に加えて、実務の経験も求められます。
実務で商法・会社法を参照する必要がある場合は、M&Aに関する知識・経験を有する専門家に相談するとよいでしょう。

まとめ

商法と会社法の違いは、適用の対象です。商法は会社を対象とすることもあれば、個人事業主を対象とすることもあるのに対し、会社法は基本的に会社を対象としています。
優先順位も、双方の異なる点です。商法と会社法が重なる部分については、まず会社法を優先して適用します。
商法も会社法も、M&Aを進める場面で参照する必要がある法律です。会社法には、合併や会社分割といったM&Aの手法に関する規定があります。
M&Aをスムーズに進めるには、法律の知識だけでなくM&Aに関する知識・経験も必要です。そのため、M&Aを検討する場合は、まず専門家に相談するとよいでしょう。
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