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株式移転と株式交換の違いとは?メリットや事例を紹介

投稿日:2024年08月15日
株式移転と株式交換の違いとは?メリットや事例を紹介

親会社・子会社の関係を構築する際に用いられる手法として、株式移転と株式交換があります。いずれも発行済みの株式を使って実施できるため、現金を準備しなくてもよい点は共通しています。
しかし、各手法は実施する目的が異なるため、違いを正確に理解し、適切な状況か見極めることが必要です。
このコラムでは、株式移転と株式交換の違いについて、わかりやすく解説します。また、各手法が利用される場面やメリット・デメリット、具体的な事例も紹介します。

目次

株式移転・株式交換の違い

株式移転とは、自社株式を新設会社に取得させて自社を完全子会社とする手法です。一般的に、ホールディングスなどの持株会社を設立する際に実施します。
一方、株式交換は自社株式を既存の別会社に取得させることで、自社を完全子会社、別会社を完全親会社とします。経営効率の向上を目指すときや、グループ内の連携を強化するときなど、グループ再編を目的として実施されることが多いです。
主な違いは、以下をご覧ください。

株式移転と株式交換の主な違い

  • 株式移転では新設会社が親会社、株式交換では既存会社が親会社になる
  • いずれもグループ内の組織再編を目的とするが、株式交換では他社の買収が目的になることがある
  • 株式移転では新設会社の登記日、株式交換では株式交換契約書に記載された日に効力を発揮する

株式移転のメリット・デメリット

グループ内の組織再編を目的とするなら、株式移転・株式交換のどちらの手法も活用できます。親会社を新設会社にするか既存会社にするか迷ったときは、それぞれの手法のメリットとデメリットを比較してみてはいかがでしょうか。
株式移転の主なメリットとデメリットは以下をご覧ください。

株式移転のメリットとデメリット

メリット 買収資金不要で実施できる
少数株主を排除できる
ホールディングスの株価が高くなる可能性がある
経営統合を実施する必要がない
デメリット 税制適格要件を満たさないときは課税される
株主構成が変化する
実施に時間がかかる
不要な資産・債務も引き継ぐ

株式移転のメリット

親会社は買収の対価として新株を発行すればよく、買収資金は不要です。また、子会社の株主の3分の2以上の賛成が得られれば実施できるため、少数株主の意向を排除できます。
グループ化した子会社によっては、ホールディングスの株価が高くなると期待できる点もメリットです。
株式移転実施後も親会社・子会社は別法人です。そのため、経営統合を実施する必要がなく、従業員の働き方や業務内容に影響が出にくいのもメリットといえます。

株式移転のデメリット

株式移転は、税制適格要件に合致しないときは課税対象となります。適格要件を満たさない場合、完全子会社の資産の一部を時価評価し、損益算入しなくてはいけないため、親会社の取得原価やのれんに影響が生じるかもしれません。
株式移転により、株主構成も変化します。株主総会での決議に必要な議決権数が増え、大株主にとっては会社への影響力が減る可能性が生じます。
また、株式移転は移転する資産や事業を選択できないため、不要な資産や負債も親会社は引き継ぐことになる点に注意が必要です。
手続きが多く、株式移転は完了までに時間がかかる手法です。株主総会での承認や債権者保護手続きなども必要になるため、最終契約日から効力発生まで数ヶ月かかることもあります。

株式交換のメリット・デメリット

株式交換のメリットとデメリットについては、以下をご覧ください。

株式交換のメリットとデメリット

メリット 買収資金不要で実施できる
親会社が上場企業の場合は、株価上昇を期待できることがある
企業を新設する手間がかからない
子会社の株主も親会社の経営に参画できることがある
デメリット 株主総会の特別決議が必要
株主構成が変化する
税制適格要件を満たさないときは時価で課税される可能性がある
不要な資産・債務も引き継ぐ

株式交換のメリット

株式交換も株式移転と同様、買収資金不要で実施できる手法です。現金があまりないときや、金融機関からの借入れを避けたいときでも、株式交換を実施できます。
また、親会社が上場企業の場合、株価上昇を期待できることがあります。十分に値上がりしたタイミングで売却すれば、利益を得られることもあるでしょう。
株式交換を実施すると、子会社の株主には親会社の株式が交付されます。株式の保有数や交付割合にもよりますが、親会社の議決権を得られることもあり、親会社の経営に参画できることがあります。

株式交換のデメリット

株式交換を実施するときには、株主総会で特別決議が必要です。議決権の過半数を有する株主が出席し、なおかつ議決権の3分の2以上の同意が条件となるため、株式交換を実施できない可能性もあります。
また、株主構成が変化し、株主ごとの会社への影響力が変わることもデメリットといえるかもしれません。特に親会社の株主にとっては、全体における保有株式の割合が減るため、会社への影響力が低下します。
株式交換では、親会社は自社株式を対価として子会社全体を買い取るため、不要な資産・債務も引き継ぐことになります。子会社の経営状況によっては、親会社の株価が下落することにもなりかねません。

株式移転・株式交換の事例

株式移転と株式交換の違いについて、事例を通して見ていきましょう。それぞれの手法の事例を紹介し、実施目的や期待される効果について解説します。

株式移転の事例

分譲マンションや資産運用型マンション、戸建て住宅などの開発・販売を手掛ける株式会社新日本建物と、事業用地のクラウド管理プラットフォームを開発・運営する株式会社タスキは、共同株式移転を合意しました。2024年3月28日に両社ともに上場を廃止し、同年4月1日には共同持株会社である「株式会社タスキホールディングス」の設立・新規上場を実施しています。
本株式移転は、両社の経営リソースを有効活用し、不動産業界におけるポジションの確立と企業価値の向上が目的です。リアルな物件と販売経路を持つ新日本建物と、インターネットで事業用地を管理するノウハウを持つタスキの連携を強化することで、よりスムーズな物件提案や販売が可能になります。
なお、新日本建物とタスキの両社は完全子会社となり、タスキホールディングスは完全親会社です。新日本建物の普通株式1株に対しては親会社の普通株式1株、タスキの普通株式1株に対しては親会社の普通株式2.24株が交付されました。
参考:株式会社タスキ「株式会社タスキと株式会社新日本建物との共同持株会社設立(株式移転)による経営統合に関するお知らせ」
参考:株式会社新日本建物「株式会社新日本建物と株式会社タスキとの共同持株会社設立(株式移転)による経営統合に関するお知らせ」

株式交換の事例

接着剤や化成品の製造・販売を手掛けるコニシ株式会社は、連結子会社であるコニシ工営株式会社を完全子会社化するために、株式交換の実施に同意しました。なお、コニシ工営は建築土木工事の設計施工請負管理を行う企業で、北海道地区のマンションや公共施設などの屋上防水回収や内部改修、耐震補強といった補修・改修業務に取り組み、建築物の長寿命化を図ります。
株式交換を実施することで、工事事業の意思決定の迅速化や、グループ内の経営資源のより一層の活用が期待されます。また、連結経営体制の構築により経営の効率化を実現することも、本株式交換の目的の1つです。 なお、コニシ工営の株式1株に対し、コニシの株式14.34株が割り当てられました。株式交換契約は2024年5月22日に締結され、効力発生は6月30日の予定です。
参考:コニシ株式会社「簡易株式交換によるコニシ工営株式会社の完全子会社化に関するお知らせ」

まとめ

株式移転と株式交換は、どちらも組織再編を目的として実施されることが一般的です。しかし、完全親会社を新設するか、企業買収を目的とするかによって、適した手法が異なります。
目的に合う適切な手法を選び、スムーズに実施するためには、専門家のサポートが必要です。サポートを受けることで、目的を達成しやすくなるだけでなく、費用や時間を削減できるメリットも得られます。また、税制適格要件は複雑なため、要件を満たして株式移転・株式交換を実施するためにも、専門家のサポートは欠かせません。
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