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地位承継とは?意味や継承との違い、使い分けなどを解説

投稿日:2024年08月23日
地位承継とは?意味や継承との違い、使い分けなどを解説

地位承継とは、権利や義務を別の人に渡すことです。たとえば、経営者としての地位や貸借人としての地位を別の人に渡すとき、地位承継が実施されたと考えられます。
このコラムでは、地位承継とは何か、わかりやすくまとめました。また、承継と継承の違い、地位承継を実施するメリットや注意点についても解説します。

目次

地位承継とは?

地位承継とは、契約に付随する権利や義務を別の人に渡すことです。地位承継が実施されると、契約の主体が変わり、承継された人が権利・義務を持つようになります。
地位承継は、M&Aにおいて使われることが多い用語です。M&Aでは、さまざまな権利・義務が売り手企業から買い手企業に移されます。M&Aの手法によっては、権利・義務の主体を変更する必要があり、権利・義務に応じた手続きが実施されます。

地位承継と地位継承の違い

承継とは、前の代からものを受け継ぐことで、主に組織や事業、権利などを受け継ぐことを指します。一方、継承は前代の人の財産や仕事、身分などを受け継ぐことです。いずれも前代から次代へと引き継ぐ行為を指しますが、受け継ぐ対象が異なることがあります。
場面によっては、特に区別せずに承継・継承を使うこともあり、厳密に使い分ける必要はありません。ただし、M&Aにおいては「承継」が使われることが多いため、「引き継ぐ」や「受け継ぐ」といった意味を表現するときは「承継」を選択する方が無難と考えられます。

地位承継が起こる場面

地位承継は次の場面で生じることがあります。

地位承継が実施される場面

  • 事業譲渡・営業権の譲渡
  • 相続
  • 法人の合併・分割
  • 賃貸借物件の貸借権の譲渡

上記の場面のうち「賃貸借物件の貸借権の譲渡」以外は管轄機関への地位承継届の提出が必要になることがあります。

事業譲渡・営業権の譲渡

事業譲渡は事業に付随する権利・義務を選択的に譲渡するM&Aの手法です。買い手企業に営業権を譲渡するケースもあります。また、事業譲渡を実施せずに営業権のみ譲渡するケースもあるでしょう。
いずれの場合も、営業権を譲渡するときは地位承継が行われます。保健所などから営業許可を受けている場合には「地位承継届」の提出の際に「営業許可証」の提出も求められます。

相続

相続も、権利や義務の移動が発生する場面の一つです。営業権や所有権、債務などの権利・義務が、被相続人から相続人に承継されることがあります。
相続により権利や義務が承継される場合、相続が確かに発生したこと、つまり被相続人の死亡を示す除籍謄本や法定相続情報一覧図、相続同意書などの提出を求められることが一般的です。

法人の合併・分割

法人が合併するとき、あるいは分割するときも、権利や義務の承継が起こることがあります。
たとえば合併の場合なら、合併により消滅する企業が有している権利・義務は、存続企業に移動します。権利・義務の種類によっては地位承継の手続きが必要なため、提出書類を準備しておきましょう。
なお、合併のときには存続会社の登記事項証明書、あるいは消滅会社の権利・義務を引き継ぐ新設会社の登記事項証明書が必要になることが一般的です。また、分割のときには営業権を承継した会社の登記事項証明書の提出が求められます。

賃貸借物件の貸借権の譲渡

賃貸借物件の貸借権を譲渡することで、物件を借りる権利を譲受側に移動できます。ただし、貸借人の一存では譲渡できません。まずは賃貸人に許可を求め、貸借権譲渡の承諾を得てから実施します。
なお、貸借権を譲渡する前に、敷金の権利も譲渡対象に含めるのか決めておくことが必要です。敷金の権利も譲渡したときは、退去時に敷金の返還が発生した場合、譲受側が返還金を受け取ることになります。

地位承継を実施するメリット

地位承継を実施することには、譲渡側・譲受側の双方にメリットがあります。主なメリットは以下をご覧ください。

地位承継のメリット

譲渡側 経営権を有したまま事業や資産を譲渡できる
中核事業に集中できる
譲受側 必要な事業・資産だけを引き継げる
節税できることもある

【譲渡側】経営権を有したまま事業や資産を譲渡できる

事業譲渡では、権利や義務を選択的に譲渡できます。事業や資産を個別に譲渡できるため、譲渡による対価を得つつも、経営権をそのまま維持することが可能です。
経営権を維持することで、残った事業に対しては今までと同じく主体的に関われます。また、役員報酬を受け続けることもでき、生活面での不安も軽減できます。

【譲渡側】中核事業に集中できる

不振事業を売却し、好成績を上げている事業に専念することも可能です。事業譲渡であれば経営権は揺らがないため、中核事業に集中できます。
事業を整理することで、中核事業に注げる時間・資金が増える点もメリットです。事業売却によって得た資金を中核事業に投入すれば、さらなる発展も不可能ではありません。

【譲受側】必要な事業・資産だけを引き継げる

譲受する側にとっても地位承継にはメリットがあります。自社の事業にとって必要な資産や権利のみを承継すれば、譲渡企業に支払う対価も必要最低限に抑えることが可能です。
また、貸借対照表に計上されていない簿外債務や、将来的に負債になる可能性のある偶発債務を引き継ぐリスクも軽減できます。

【譲受側】節税できることもある

承継した償却資産やのれんは、償却費として損金計上が可能です。法人税の課税対象額が減り、節税できることもあります。
ただし、承継する資産によっては税負担が増えることもあるため注意が必要です。たとえば譲受した資産・権利に消費税の課税対象が含まれている場合は、譲受のための対価に加え、消費税も支払わなくてはいけません。主な課税対象資産には次のものがあります。

M&Aにより承継する可能性がある課税対象資産

  • 棚卸資産
  • 建物
  • 設備
  • ソフトウェア
  • 特許権、商標権
  • 営業権(のれん)

また、不動産を取得するときには不動産取得税、不動産の名義変更時や許認可取得時には登録免許税も必要です。

地位承継を実施するときの注意点

メリットの多い地位承継ですが、場合によってはデメリットが生じることもあります。主に注意したいポイントとしては、次の点があげられます。

地位承継の注意点

譲渡側 手続きが煩雑になる
承継に時間がかかる
相手から合意を得る必要がある
譲受側 手続きが煩雑になる
承継に時間がかかる

【譲渡側・譲受側】手続きが煩雑になる

地位承継を実施するときには、権利・義務ごとに手続きが必要です。たとえば営業許可の権利を承継するときなら、地位承継届だけでなく、営業譲渡を示す書類や営業許可証書き換え交付申請書、法人の登記事項証明書などの提出が求められることがあります。
選択的に承継することで、譲渡・譲受の自由度は高まりますが、手続きが煩雑になる点には注意が必要です。行政書士や司法書士などの専門家にも相談し、正確に手続きを実施していきましょう。

【譲渡側・譲受側】承継に時間がかかる

承継する権利・義務が多い場合には、手続きに時間がかかります。必要書類を揃えるだけでも多大な時間と手間がかかり、場合によっては本業に集中できなくなるかもしれません。
また、書類に不備があるときは、再提出が必要になるため、さらに時間がかかります。専門家にサポートを依頼し、本業に支障が生じないようにしましょう。

【譲渡側】相手から合意を得る必要がある

地位を承継するときは、その地位に関わる相手から合意を得ることが必要です。たとえば、従業員を譲受企業に引き継ぐときは、従業員一人ひとりから雇用者や雇用契約が変わることに対して合意を得なくてはいけません。対象となる従業員が多い場合や、雇用者や雇用契約の変更に対して合意を得にくい場合は、交渉に多大な時間と労力がかかります。
取引先も同様です。地位承継を実施する前に合意を得なくてはいけません。取引の継続を希望しない取引先が多い場合には、譲渡価格に影響が生じる可能性があります。
そのほかにも、債権者や株主からも合意を得る必要が生じます。ただし、事業譲渡として地位承継を実施する場合には、株主総会の特別決議により実行できるため、株主全員からの合意を得る必要はありません。また、譲渡する資産の簿価合計が会社の簿価総資産の5分の1以下の場合なら、株主総会を開催せずに、取締役会の決議だけでも実行できます。

まとめ

地位承継とは、権利や義務を別の人に引き継ぐことです。地位承継が実施されると、契約の主体が変わり、引き継いだ人が新たに権利・義務を持つようになります。営業権や貸借権、所有権などのさまざまな権利や義務が地位承継の対象となり、前代から次代へと引き継がれます。
地位承継の際には、行政や法務関連の手続きが必要になることが少なくありません。特に事業譲渡や合併、分割などのM&Aを実施するときは承継する権利・義務が多くなり、手続きも煩雑かつ膨大になることがあるため、専門家のサポートを受けるようにしましょう。
専門家のサポートを受ける際には手数料が発生しますが、サポートを受けずに時間や労力を費やす方が、企業にとっては損失となることもあります。権利・義務の引き継ぎ手続きに時間がかかってしまうと、承継した権利・義務を活用できない期間が発生し、利益を得る機会を逸するかもしれません。
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