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M&Aの注意点とは?売り手と買い手それぞれのリスクについて解説

投稿日:2024年08月23日
M&Aの注意点とは?売り手と買い手それぞれのリスクについて解説

M&Aにはメリットがある一方で、リスクや注意点もいくつか存在します。たとえば、売り手はM&Aにより従業員を動揺させることがある点に注意しなければなりません。買い手も、対象先の簿外債務が見つかる可能性がある点がリスクです。
この記事では、売り手と買い手の立場に分けて注意点を説明してから、成功するためのポイントも解説します。

目次

【売り手】M&A実施時の注意点・リスク

M&A実施にあたって、売り手が注意すべき点やリスクは以下のとおりです。

  • 従業員を動揺させることがある
  • 従業員の待遇が悪化する可能性がある
  • 業績が悪化する可能性がある
  • すぐに売却できるとは限らない
  • 自由な経営ができなくなる

それぞれ解説します。

従業員を動揺させることがある

売り手は、M&Aの交渉をしていることが知れ渡ると、従業員を動揺させる可能性がある点には注意が必要です。
動揺が広がると、M&Aに対する反対意見が出たり、退職者が出たりする可能性があります。その結果、当初前向きに進んでいた交渉がまとまらなくなることもあるでしょう。
混乱を避けるためには、クロージングまで従業員に情報を漏らさずM&Aを進めることが大切です。また、情報を伝える際は一部の従業員だけでなく、同時に全従業員に丁寧に説明する姿勢が求められます。

従業員の待遇が悪化する可能性がある

売り手は、従業員の待遇が悪化する可能性にも注意しましょう。
M&Aの手法のうち株式譲渡であれば、基本的に雇用契約は継続されます。ただし、買い手のグループ傘下に入ることで、福利厚生や退職金などに変化が生じることがあるでしょう。
売り手は、従業員の労働環境が今までより悪化してモチベーションが低下することのないよう、綿密に交渉しなければなりません。
なお、M&Aの手法として事業譲渡を用いる場合、契約が引き継がれないため、買い手と従業員の間で雇用契約の結び直しが必要です。

業績が悪化する可能性がある

業績が悪化するリスクも、売り手は考慮しなければなりません。
自社の成長を期待してM&Aを決断したにもかかわらず、実施後かえって業績が悪化してしまうことがあります。とくに、M&Aに伴い組織が変わり現場に混乱が生じたり、従業員が買い手側の企業文化・組織風土に戸惑ったりすると、うまくいきません。
また、M&Aの交渉中に業績が悪化した場合は、売却できないことがある点にも注意が必要です。M&Aの交渉に専念して自社の経営が疎かになり、業績が悪化すると企業価値が下がるため、M&A交渉の決裂や売却価格の下落につながることがあります。

すぐに売却できるとは限らない

M&Aを決断したとしても、すぐに売却できるとは限らない点に注意が必要です。
M&Aの成約に至るまでには、ある程度の期間を要します。状況によって、数年かかることもあるでしょう。
慌ててM&Aを進めようとすると、低い価格で売却せざるを得なかったり、望ましくない相手に売却してしまったりしかねません。そのため、M&Aの交渉を進めつつも、引き続き経営に集中する覚悟が必要です。

自由な経営ができなくなる

売り手は、自由な経営ができなくなる(経営の自由度が下がる)点にも注意しましょう。
M&Aの手法のうち株式譲渡を選択した場合、株式の議決権割合の多くが買い手に移ります。売り手側の現オーナー経営者は、引き続き代表者や役員として残るとしても、買い手側の意思を考慮しなければならなくなる分、今までより窮屈に感じるでしょう。

【買い手】M&A実施時の注意点・リスク

買い手がM&A実施時に注意することやリスクは、以下のとおりです。

  • 対象先の簿外債務が見つかる場合がある
  • 取引先の契約が解除される可能性がある
  • 従業員が離職して業績悪化する可能性がある
  • 期待したシナジー効果を得られるとは限らない
  • マイナスイメージを引き継ぐことがある

それぞれ解説します。

対象先の簿外債務が見つかる場合がある

買い手には、M&A実施後に対象先の簿外債務や過去の不正などが見つかるリスクがあります。簿外債務とは、計上漏れしている買掛金や未払い残業代、損害賠償請求された額のように、貸借対照表上に記載されていない債務のことです。
とくに、デューデリジェンス(会社に関する実態を調査すること)で検討が漏れていたり、十分でなかったりする場合に、簿外債務を見逃してしまうリスクが高まります。

取引先の契約が解除される可能性がある

買い手は、対象会社が抱える取引先との契約が解除されるリスクも理解しておきましょう。
とくに注意しなければならないのが、COC(Change Of Control)条項です。COC条項とは、M&Aなどの事情で契約の一方の会社の支配権に変更があった際に、他方の会社が契約を解除したり、契約内容に制限をかけたりできることを定めた条項を指します。
COC条項によりM&A実施後に対象会社の得意先との取引が制限されると、当初見込んでいたような業績をあげることが困難になるでしょう。

従業員が離職して業績悪化する可能性がある

買い手は、従業員が離職することで対象会社の業績が悪化するリスクにも注意しなければなりません。
M&A実施後、買い手への不満やモチベーションの低下などを理由に対象会社の従業員が大量に離職する可能性があります。とくに、優秀な従業員が対象会社を去る場合に、当初見込んでいたような業績を出せないことがあるでしょう。
また、対象会社の欠員を埋めるため自社の従業員を投入すると、買い手が今まで営んできた事業がうまくまわらなくなる可能性があります。

期待したシナジー効果を得られるとは限らない

M&Aを実施しても、期待したシナジー効果を得られるとは限らない点にも注意しましょう。シナジー効果とは、複数の会社や部門が互いに販路などを協力することで、単独で活動していたとき以上の効果を生み出すことです。
買収することで得られるシナジー効果を期待して、M&Aを決断する会社も少なくありません。しかし、想定したようなシナジー効果を得られないと、買い手は無駄な投資をしたことになります。

マイナスイメージを引き継ぐことがある

買い手は、M&Aを実施することで売り手のマイナスイメージを引き継ぐリスクを抱えます。
たとえ自社でコンプライアンスを徹底していても、M&A実施後に対象会社で不正が発覚すると、買い手のブランドイメージまで低下するでしょう。簿外債務の発覚リスクと同様に、デューデリジェンスを徹底したうえで、M&Aを決断することが大切です。

【売り手・買い手共通】M&A成功のポイント

売り手も買い手も、M&Aを成功させるためには以下がポイントです。

  • 目的を明確にする
  • 契約書を確認する
  • M&Aのタイミングを計る
  • 専門家に相談する
  • 情報管理を徹底する
  • 統合後のことを考える

各ポイントを解説します。

目的を明確にする

売り手も買い手も、目的を明確にすることがM&A成功のポイントです。
はっきりとした目的を定めないままM&Aを進めると、会社の成長につながらないことがあります。M&Aの効果が現れなければ、かかった費用や労力が無駄になるでしょう。
M&Aのスキームは、株式譲渡・事業譲渡・株式交換などさまざまです。目的を明確にすることで、自社に適切なM&Aのスキームを選びやすくなります。

契約書を確認する

契約書を確認することも、M&Aの成功に欠かせません。
たとえば、M&Aの契約書には表明保証が盛り込まれることがあります。表明保証とは、売り手が自社や対象会社の法務・税務・財務などに関する一定の事項が真実であることを表明するものです。
後に損害賠償を請求されないために、売り手は何が表明保証として記載されているかをしっかり確認しなければなりません。一方、買い手は表明保証を確認することで、虚偽があれば損害賠償請求ができるのかを把握できます。

M&Aのタイミングを計る

M&Aのタイミングを計ることも、成功のポイントです。
実施時期によって、売り手が想定していたよりも高く売却できたり、買い手は想定よりも安く買えたりする可能性があります。たとえば、会社の業績が好調なときや好景気のときには、売り手が高値で売却しやすいです。
買い手も、売り手が売り急いでいれば交渉次第で安く買えることがあります。ただし、強引な交渉は対象会社の従業員に悪印象を与えかねないため、注意しましょう。

専門家に相談する

M&Aを進めるにあたって、専門家へ相談することも検討しましょう。なぜなら、価格算定やデューデリジェンス、契約書作成のように、M&Aでは専門知識が求められる場面が少なくないためです。
また、M&Aの候補先探しには、M&A仲介会社などが役に立ちます。さまざまなネットワークを有しているM&A仲介会社に相談すれば、多数の候補先から自社にとって適した相手を探し出せるでしょう。

情報管理を徹底する

M&Aの交渉を進めるにあたって会社の機密情報をやり取りする場面があるため、情報管理を徹底することも、重要です。
万が一情報漏洩が発生すると、相手からの信頼を失い交渉に失敗したり、トラブルにつながったりすることになりかねません。情報共有は社内のごく限られた範囲内に留めましょう。
なお、M&Aで重要情報を提供する際は、秘密保持契約を締結することが一般的です。

統合後のことを考える

統合後のことを考えてM&Aを進めることも、成功のポイントとしてあげられます。売り手は、統合後の従業員のことを考えてM&Aのスキームを選択したり、買い手と交渉したりすることが大切です。
一方、買い手はPMI(M&A実施による効果をスムーズに最大化するための作業)を検討します。M&Aを実施する前から、システムや業務プロセス、企業文化などをどのように統合するか計画しておくことによって、現場の混乱を最小限に抑えられるでしょう。

まとめ

M&Aにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかリスクも存在します。そのため、注意点を理解したうえでM&Aを進めることが大切です。
たとえば、売り手は従業員の待遇が悪化する可能性がある点や、すぐに売却できるとは限らない点などに注意しましょう。一方、買い手は対象先の簿外債務が見つかる場合がある点や、対象会社のマイナスイメージを引き継ぐ可能性がある点などに気をつけなければなりません。
リスクや注意点を理解してM&Aを成功するには、専門家に相談することがポイントです。また、M&A仲介会社に依頼すれば、候補先をスムーズに探せるでしょう。
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