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M&Aのスケジュールとは?誰でもわかる準備・交渉・クロージングの流れ

投稿日:2024年06月03日
M&Aのスケジュールとは?誰でもわかる準備・交渉・クロージングの流れ

M&Aの複雑なプロセスをスムーズに進行させるには、スケジュールに沿った計画的な実行とリスクを想定した判断が求められます。
M&Aの契約における複雑な書類作成、相手先とのマッチング・交渉、デューデリジェンスなどは、M&Aに精通した専門家のサポートを受けながら進める必要性があります。
このコラムでは、M&Aの全体的なスケジュールと流れに沿った具体的なアクションについて詳しく解説します。

目次

M&Aはスケジュールに沿った実行が大事

M&Aのスケジュールは、戦略策定(目標設定)から始まり、対象企業の絞り込み、交渉、最終締結、統合作業といった大きな流れで進行します。一般的に、準備からクロージングまで半年〜1年程度の期間を要すると言われています。
M&Aのプロセスが長期に及ぶほど、市場や業界の変動に影響されやすいため注意が必要です。なるべくコンパクトなスケジュールにすることで、急激な市場変動や業界の影響を最小限に抑えられます。また、取引の条件や評価が変動するリスクが軽減され、合意に達しやすくなる側面もあります。
競合他社や株主による不正競争や取引の阻害を避けるためにも、あらかじめ作成したスケジュールに沿った行動が大事です。

M&Aの基本的なスケジュール

M&Aのスケジュールは、売り手側と買い手側でニーズが生まれたあと、準備→交渉→最終契約という流れで進みます。
まずは、一般的なM&Aの流れを全体的に把握しておきましょう。

M&Aの流れ

  1. M&Aの目的・目標を明確にする
  2. M&A専門業者を選定して契約する
  3. 交渉相手を絞り込む
  4. 秘密保持契約で内部情報を交換する
  5. 売り手側によるIMとプロセスレターの提示する
  6. 買い手側による企業価値評価
  7. 売り手側と買い手側の経営者による面談
  8. 基本合意書を取り交わす
  9. デューディリジェンス(DD)を行う
  10. 最終契約に向けた交渉を行う
  11. 最終契約を取り交わす
  12. クロージングへ向けた準備と実施
  13. 経営統合作業(PMI)を行う

M&A準備期間のスケジュール

M&Aの準備期間では、目的・目標の明確化や専門業者の選定・決定などを行います。
具体的な取り組みをスケジュールに沿って詳しく解説します。

M&Aの目的・目標を明確にする

M&Aの目標と目的は、売り手側と買い手側でそれぞれ異なります。

● 売り手側(譲受側)

  • 従業員の雇用を維持する
  • 事業承継をして廃業を回避する
  • 豊富な経営資源を得て企業・事業を存続させる
  • コア事業に優秀なリソースや技術を投入する
  • 創業者利益を確保する
  • 事業への投資回収を早める
  • 経営者の個人保証を解除する

● 買い手側(譲受け側)

  • 自社にない技術を得て事業を強化する
  • 優秀な人材を得てサービスの品質を向上させる
  • 新規事業参入のコストと時間を削減する
  • 事業成長のスピードを加速させる
  • 同業他社を吸収してシナジー効果を得る
  • 競合企業を吸収して市場シェアを拡大する

上記はM&Aにおける大きな目標の例です。さらに細かい目標・条件まで事前に検討しておくことが自社に最適な相手の選定につながります。

M&A専門業者を選定して契約する

M&Aを成約させるには、財務・税務・会計・法務・労務などの幅広い領域で専門知識が求められます。 そのため、M&Aをスムーズに進めたい場合、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)やM&A仲介業者、マッチングプラットフォーム、事業引き継ぎ支援センターなどに依頼するのが一般的です。

● FA(ファイナンシャル・アドバイザー)

FAとは、M&Aの戦略立案を始め、相手先との交渉や必要書類の作成などをサポートするアドバイザーのことです。依頼者(売り手・買い手)の利益最大化に関する助言を行い、FA業務を投資銀行や証券会社、商業銀行、M&A専門会社、経営コンサルティング会社などが担います。

● M&A仲介業者

M&A仲介業者は、売り手と買い手の双方に対して、中立的な立場で仲介業務や助言を行う業者のことです。M&Aの専門知識を有する担当者が、企業価値の算出や複雑な書類作成、相手先とのコミュニケーションを支援します。M&A仲介業者のなかには、コンサルタントや弁護士・公認会計士・税理士など専門職がチームで対応するケースもあります。

● マッチングプラットフォーム

M&A専門のマッチングプラットフォームとは、条件に合った相手(売り手or買い手)をネットワークを介して検索・閲覧できるオンラインシステムのことです。希望の条件に合った相手が見つかった場合、オファーを送る仕組みになっています。マッチングしたあとの交渉に関しては、売り手と買い手が直接交渉するケースが多く、FAやM&A仲介業者が担うこともあります。

● 事業引き継ぎ支援センター

事業引き継ぎ支援センターとは、M&Aに関する相談を受け付けている国の支援機関のことです。全国各地に拠点を構えており、事業承継をスムーズに進めるためのアドバイスや他の専門業者への紹介を無償で行なっています。
このように、M&A専門業者によって、サポート可能な業務の範囲や得意とする分野、料金体系などが異なります。そのため、複数の手段・サービスを比較した選定が重要です。

M&A交渉期間のスケジュール

M&A専門業者と契約したあと、交渉相手の絞り込みや秘密保持契約の締結、経営者同士の面談、基本合意締結などを行います。
交渉期間における具体的なスケジュールについて紹介します。

交渉相手を絞り込む

売り手側は、企業名を伏せながらM&Aの概要書(ノンネームシート)を作成して、買い手候補に提示します。
ノンネームシートには、本社所在地をはじめ、事業内容、事業規模、業績推移、売却目的、希望売上価格などの詳細を記載します。ノンネームシートは買い手を勧誘する重要書類であり、M&A専門業者またはプラットフォームを通じて買い手に共有するのが一般的です。
買い手側は、独自に進めている買収候補の調査とノンネームシートの内容から、最適な交渉相手を絞り込みます。買収候補の事業内容・事業規模・業績などの多岐にわたるデータから、M&Aによるシナジー効果の有無や事業の成長性を評価します。

秘密保持契約で内部情報を交換する

秘密保持契約とは、一般向けに非公開の情報を入手した者が、その情報を第三者へ開示したり、目的以外で使用したりすることを禁ずる約束を交わす文書のことです。
M&Aの交渉において、より詳細な情報を共有する際に秘密保持契約を行います。
秘密保持契約の締結は、売り手と買い手が直接交わすケース、M&A専門業者が代行するケースがあります。
M&Aでは、多岐にわたる秘密情報の交換を行うため、秘密保持契約は差入方式で取り交わすのが一般的です。

IMとプロセスレターを提示する

秘密保持契約で交わした情報も含め、売り手の様々な企業情報をまとめたIM(インフォメーションメモ・ランダム)を買い手に提示します。
また、入札方式でM&Aを行う場合、特定の情報をまとめたプロセスレターも併せて提示する必要があります。

● IM(インフォメーション・メモランダム)

IMには、売手会社の魅力(エグゼクティブサマリー)・企業概要・株式情報・役員情報・組織体制・社内規則・許認可・事業概要・事業計画・所有資産・経営成績・主要なリスク・希望スケジュールなど多岐にわたる情報を記載します。

● プロセスレター

プロセスレターには、案件の概要・挨拶・取引プロセス・スケジュール・希望条件などを記載します。プロセスレターは、売り手側で作成するケースが多いです。

買い手側による企業価値評価

ここまで開示された買収候補の企業情報やIMなどを参考にして、買い手側は企業価値評価(バリエーション)を行います。
企業価値算定とは、買収候補が今後生み出すであろう利益や、その源泉となる無形資産などから企業価値を金銭的に評価することです。
企業価値評価が終わったあと、下記のM&Aの手法(スキーム)から最適な手段を絞り込んでいきます。

● M&Aの手法

  • 合併(吸収合併・新設合併)
  • 会社分割(吸収分割・新設分割)
  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 株式交換
  • 株式移転

これらの手法は、M&A成約後の買収対価や買収される企業が抱えるリスク、将来ビジョンなど、総合的な観点で決定します。

売り手側と買い手側の経営者が面談する

売り手と買い手が双方理解を深め、疑問を解消するための打ち合わせであるトップ面談を行います。
トップ面談は、M&Aの基本合意書を締結する前に行うのが一般的です。当事者間で信頼関係を築き、満足度の高いM&Aを成約するために重要な打ち合わせとなります。

基本合意書を取り交わす

M&Aの手法や譲渡対象の範囲、金額などの基本条件を合意した段階で、基本合意書を取り交わします。

● 基本合意書の主な記載事項

  • M&Aの手法
  • 買収金額
  • デューディリジェンスのスケジュール
  • デューディリジェンスへの協力義務
  • 独占交渉権の付与など

基本合意締結はあくまで暫定的な合意を示すのであり、このあとの交渉から法的拘束力を持たせていくのが一般的です。

デューディリジェンス(DD)を行う

M&Aの成約前には、買収される企業の企業価値やリスクなどを総合的に調査・評価し、買収に相応しい企業か検証するデューディリジェンス(DD)を行います。
デューディリジェンスは、不良債権や資産の過大評価などの財務リスク、技術的な問題に関する運用リスク、訴訟・法則性違反などの法的リスクなどを見極める重要なプロセスです。
M&Aにおいては、事業・財務・法務・税務・IT・人事などの調査領域ごとに異なる専門家がデューディリジェンスを実施します。
デューディリジェンスは、対象企業の人材・技術・ノウハウ・その他無形資産も含めた総合により、どのようなシナジー効果を生み出せるか判断する材料になります。

M&Aのクロージングに向けたスケジュール

デューディリジェンスの実施後は最終契約に向けた交渉が行われ、最終契約締結、クロージング、そしてPIM(経営統合作業)を行い、M&Aの一連の流れが終了します。
ここからは、M&Aのクロージングに向けたスケジュールを詳しく解説します。

最終契約に向けた交渉

買い手側は、デューディリジェンスで見極めたリスクを考慮しながら、最適な条件でのM&A成約を目指す交渉を行います。
売り手側は、買い手側から提案された事項に関して、承認できる事項と譲歩すべき事項を慎重に判断します。
最終契約に向けた交渉では、M&Aの手法をはじめ、譲渡価格の変更、偶発的な債務に対する補償、リスクを低減するための施策実行などが争点となりやすいです。
納得のいく条件で成約するために、専門家にアドバイスを求めることも必要となります。

最終契約を取り交わす

最終交渉がまとまったあと、下記の事項を盛り込んだ最終契約を締結します。

● 最終契約の締結事項

  • M&Aのスキーム
  • 譲渡価格(価格調整)
  • 双方の義務における誓約事項
  • 事実関係や法律関係の表明保証
  • 誓約事項・表明保証に反した場合の補償
  • クロージングの条件など

上場企業の場合、企業内容等の開示に関する内閣府令19条、適時開示義務(または有価証券上場規程402条)、臨時報告書提出義務に準拠して、速やかに契約内容の開示・届出を行う必要があります。

クロージングへ向けた準備と実施

M&Aの手法と契約内容に応じて、会社法・独占禁止法・労働契約承継法に準拠した手続きを行います。
クロージングでは、多くの必要書類と複雑な手続きを要するため、できれば数日前から各種手続きをスケジューリングしておくことが大事です。
クロージング当日は、株式交付や株主名簿の名義書き換え、譲渡対価の支払い、設立登記などの作業が行われます。
クロージング後に関しては、財務諸表を確定させるための手続きや、最終契約書に盛り込まれた譲渡対価の価格調整などの作業が発生します。
事業譲渡の場合、売掛金・買掛金・不動産・取引先との契約・知的財産権・ライセンスなどの移転が個別に行わなければなりません。合併・会社分割の場合は、個別の移転作業が不要となりますが、登記や知的財産権の登録が必要です。

経営統合作業(PMI)を行う

M&Aの最終的なスケジュールとして、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を行います。
PMIは、企業の合併・買収に伴う経営統合作業のことです。クロージング後、3ヶ月〜6ヶ月程度の短期的なスケジュールで、組織体制・社内規定・人事制度・定款・経理・財務・原価のなどの多岐にわたる見直しを行います。
クロージングから100日後を目安として、経営統合作業を本格的に進めます。PMIのプロジェクトチームが主導となり、M&A成約後の現状分析と課題の洗い出しを行い、3年〜5年程度を目標とした成長戦略やビジョンを策定します。
PMIを円滑に進めたい場合、売り手側は総合にあたって経営者がM&Aの目的・理由を全社的に説明し、従業員の理解を得ることが大事です。
買い手側としては、成約後の投資回収への焦りがあったとしても、相手企業を尊重した姿勢で話し合いを重ねる必要があります。
M&A成約後に「期待したシナジーが生まれない」というケースもあるため、M&Aに精通した専門家のアドバイスやサポートを受けながらPMIを進めるのが望ましいです。

まとめ

M&Aの成約プロセスでは、交渉相手の絞り込みや秘密保持契約の締結、トップ面談、デューディリジェンス、最終契約締結、クロージング、経営統合作業などの多岐にわたる取り組みが行われます。
予期せぬ市場変動や業界の動きによる影響を最小限に抑えるためにも、M&Aのスケジュールをあらかじめ把握し、スムーズに進める必要性があります。
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