有限会社を売却する方法を解説!譲渡の流れや費用も紹介
2006年の会社法施行により、有限会社を新たに設立することはできなくなりました。しかし、まだ有限会社は存在しており、売却(譲渡)も可能です。
このコラムでは、有限会社の売却方法や売却時の注意点、相場についてまとめました。また、よくある売却の理由も紹介します。
有限会社は売却(譲渡)できる?
2006年以降、有限会社を新たに設立することはできませんが、売却(譲渡)は可能です。なお、会社法施行以降、有限会社は正式には「特例有限会社」という名称になり、会社法上は株式会社として区分されています。
2023年時点での登記件数は169,562件です。株式会社に次いで多い会社形態ですが、今後は新規に設立できないため、減少し続けることが見込まれます。
形態別会社数
会社形態 | 総数 |
---|---|
株式会社 | 1,024,428 |
特例有限会社 | 169,562 |
合名会社 | 807 |
合資会社 | 2,995 |
合同会社 | 115,190 |
有限会社売却のよくある理由
特例有限会社として経営を続けていくケースもありますが、売却(譲渡)するケースもあります。有限会社を売却する主な理由は、次の3つです。
有限会社を売却する主な理由
- 後継者不在
- 人材不足
- 売却益の確保
それぞれの理由について、解説します。
後継者不在
経営者が高齢になった、あるいは別事業に注力することになったなどの理由で、経営から手を引くことがあります。後継者に事業を引き継いで引退するのが理想ですが、後継者がいないこともあるでしょう。
後継者不在の場合、廃業も検討できますが、従業員や取引先に与える影響を考えると、有限会社を存続させるほうが良いこともあります。有限会社を売却し、買い手に経営を引き継いでもらうという選択肢も検討できるかもしれません。
人材不足
経営を継続したいけれども、人手不足で継続が難しいケースもあります。特に地方の中小都市や山間部では労働人口の減少が著しく、経営継続が困難になり、廃業を余儀なくされることも珍しくありません。
しかし、すべての地方のすべての会社が人手不足に陥っているわけではありません。魅力ある商品やサービスを取り扱う会社や柔軟な働き方に対応している会社などは、地域を問わず活気に満ちあふれています。有能な経営者に有限会社を買い取ってもらい、新しいビジネススタイルで再生の道を模索することもできるでしょう。
売却益の確保
従業員や取引先が少なく、そのまま廃業しても問題のないケースもあります。しかし、廃業するときには在庫や設備の処分費用や事務所・倉庫の解体費用などがかかることもあり、相当額の支出が必要になることも少なくありません。
そのまま廃業するとマイナスですが、売却すればプラスになることがあります。売却益が確保できれば、老後資金や別事業に参入する費用として活用できるかもしれません。
有限会社を売却(譲渡)する方法
有限会社の売却(譲渡)は、次のいずれかの方法で実施されることが一般的です。
有限会社の売却方法
- 株式譲渡を実施する
- 株式会社に変更してから売却する
それぞれの方法の手順やメリット、実施する際の注意点について解説します。
株式譲渡を実施する
会社法の施行により、会社形態を変更しなかった有限会社はすべて特例有限会社になりました。会社法上では特例有限会社は株式会社として分類されるため、株主総会の決議を得て定款を変更すれば、株券の発行が可能です。
発行した株券を買い手に売却する「株式譲渡」により、有限会社をそのままの形で売却できます。株式譲渡なら会社の権利や資産もまとめて買い手に譲渡するため、手続きが比較的簡単に済む点もメリットです。
ただし、特例有限会社ではすべての株式は自動的に「譲渡制限株式」として扱われるため、株主総会で承認を得てから譲渡しなくてはいけません。承認を得られない場合には株式譲渡ができない点に注意が必要です。
株式会社に変更してから売却する
会社形態を株式会社に変更してから売却する方法もあります。
会社法では特例有限会社は株式会社として扱われますが、実際に株式会社になったわけではないため、上場ができません。しかし、特例有限会社から株式会社になる手続きをすれば、上場できるようになります。
また、特例有限会社ならではの「株主間の株式譲渡に制限がある」「役員の任期がなく、ワンマン経営になりやすい」といったデメリットが払拭され、売却しやすくなるでしょう。
有限会社を売却(譲渡)する際の注意点
有限会社を有限会社として売却(譲渡)するときは、次の点に注意が必要です。
有限会社売却時の注意点
- 定款変更が必要
- 株券の確認が必要
- 情報漏洩リスクに注意が必要
- 利用できるM&Aスキームが制限される
- 従業員の処遇や取引先との関係を考慮する
各注意点を解説します。
定款変更が必要
特例有限会社は株式の譲渡制限があるため、株主が個々に株式を売却できません。そのままでは株式譲渡ができないため、まずは定款を変更し、譲渡制限を変更することが必要です。
定款を変更するには、株主総会で決議を取り、承認を得なくてはいけません。取締役会設置会社なら取締役会で決議できるため、株主総会を開くよりも手続きは簡単になりますが、特例有限会社では取締役会を設置できないため、株主総会の開催・決議が必要です。
株券の確認が必要
定款や登記で定めていない限り、すべての有限会社は株券を発行しない「株券不発行会社」です。株式譲渡の際にも、株券の現物を譲渡する必要はありません。
しかし、定款や登記で「株券発行会社」と定めている有限会社の場合は、株式譲渡をする際に株券の現物を揃える必要があります。株式譲渡では原則としてすべての株式を買い手に譲渡するため、株券の現物もすべて揃っているか確認しなくてはいけません。
場合によっては、株券の持ち主がわからない、株券の一部を紛失しているといった問題が生じている可能性があります。株式譲渡までに再発行などの手続きを実施し、過不足なく買い手に譲渡できるようにしておきましょう。
情報漏洩リスクに注意が必要
有限会社は2006年に会社法が施行される前に設立した会社です。
歴史が古い会社も多く、取り扱う個人情報も多い可能性も想定されます。売却の過程で個人情報が流出しないよう、注意してください。
利用できるM&Aスキームが制限される
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」では、有限会社が吸収合併の存続会社や吸収分割の承継会社になることを禁止しています。そのため、株式交換や株式移転は利用できません。
利用できるM&Aのスキームが制限されることで、買い手候補との交渉がうまくいかず、売却が進まない可能性があります。売却が難しいときは、株式会社へと会社形態を変えるほうが良いかもしれません。
関連記事:株式移転と株式交換の違いとは?メリットや事例を紹介
従業員の処遇や取引先との関係を考慮する
株式譲渡では、会社という枠組みだけでなく資産や権利、また、従業員や取引先もまとめて買い手に譲渡します。しかし、従業員や取引先の中には、「経営者が変わるなら雇用関係や取引関係を解消したい」と考える方がいるかもしれせん。
株式譲渡実施後に大量離職や取引解消などが発生しないためにも、譲渡契約前に従業員の処遇がどうなるのか、取引先との関係がどのように変わるのかといった事柄を詳細に説明しておくことが必要です。また、従業員や取引先の意思を正確に聞き取ったうえで、買い手との交渉を進めていくようにしましょう。
有限会社の売却(譲渡)相場
有限会社の売却(譲渡)価格は、年買法で見積もることが一般的です。年買法では、会社の実際の資産価値に加えて、今後2〜5年で得られると予想される利益を合わせた金額を売却価格とします。
売却するかどうか迷ったときは、まずは売却価格を概算してみてください。また、有限会社の売却実績が豊富なM&A仲介会社に相談するのも1つの方法です。廃業するよりも売却のほうがメリットが多いと判断されるときは、売却を前向きに進めていきましょう。
まとめ
有限会社の売却は可能です。株式譲渡のスキームで売却することが一般的ですが、有限会社の株式は譲渡制限があるため、まずは株主総会を開催して株式譲渡の承認を得なくてはいけません。また、株券発行会社の場合は、すべての発行済み株式が揃っているか確認し、必要に応じて再発行する作業も必要です。
有限会社としての売却が難しい場合や買い手がつきにくいときは、株式会社に会社形態を変更してから売却する方法も検討できます。会社によって適切な売却方法が異なるため、専門家のサポートを受けて売却を進めていくようにしましょう。
有限会社売却の目的によっても、適切な売却方法は異なります。「可能な限り高額で売却したい」「歴史ある有限会社の名前を残したい」など、売り手企業様によって目的や希望は異なります。目的に適った方法での売却を実現するためにも、M&Aにおける豊富な知見とノウハウを有する「虎ノ門キャピタル株式会社」にぜひご相談ください。
虎ノ門キャピタル株式会社では、専任のM&Aアドバイザーだけでなく、会計士や税理士などのスペシャリストがチームとなり、専門的な知見を活かしたアドバイスから交渉まで幅広くサポートします。
また、虎ノ門キャピタル株式会社は、ご成約まで一切の報酬をいただかない「完全成功報酬型」です。まずは「無料相談」から有限会社の売却に関するお悩みをご相談してみてはいかがでしょうか。
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