投資とは？融資・出資の違いや資金調達方法についても解説

投資には、融資や出資が含まれます。融資と出資の主な違いは、目的や返済義務などです。
事業者が融資を受けるメリットとして、経営権に与える影響が少ないことや、資金繰りの計画を立てやすいことがあげられます。一方、出資を受けるメリットは、返済の義務がないことや投資家のノウハウを得られることなどです。
この記事では、投資・融資・出資の違いに加え、それぞれのメリットとデメリットや、具体的な資金調達方法について解説します。

投資・融資・出資の違い

投資・融資・出資の主な違いは、範囲や目的、返済義務の有無などです。各用語の概要とあわせて、違いについて詳しく解説します。

投資とは

投資とは、将来利益を得られると期待して、何かに資金を投下することです。たとえば、対象の企業が成長することで値上がり益や配当金が発生することを見込んで株式を購入することは、投資に該当します。
また、投資の対象は、株式などの証券に限らず、事業や不動産などさまざまです。そのため、融資や出資も投資の一部といえるでしょう。

融資とは

融資とは、主に利息を得ることを目的として、資金を融通することです。融資を受けた企業や個人は、原則として期日までに対象の資金を利息と一緒に返済しなければなりません。
一般的に融資の主体となるのは銀行などの金融機関です。メガバンクや地方銀行などの民間銀行による融資を民間融資、政府系金融機関や地方の制度融資などを公的融資と呼びます。
なお、融資を受けた場合、貸借対照表上で増えるのは「資産」と「負債」です。1年以内に返済期日が到来する融資の場合は「短期借入金」として「流動負債」、借入期間が1年超にわたる場合は「長期借入金」として「固定負債」に計上します。

出資とは

出資とは、配当金を得ることや事業を成長させることなどを目的として、資金を出すことです。融資と異なり、出資を受けた事業者は基本的に返済義務がありません。
一般的に、出資の主体となるのは投資家です。ベンチャー企業への投資を主な目的としたVC（ベンチャーキャピタル）、個人で起業家に資金を提供するエンジェル投資家などの投資家が存在します。
なお、出資を受けた際、貸借対照表上で増えるのは「資産」と「純資産」です。「資本金」や「資本準備金」などとして、「純資産」に計上します。

融資・出資を受ける方法

ここから、具体例を交えて融資や出資を受ける方法を紹介します。

融資の具体例

一般的に、融資を受ける際は、まず金融機関に相談したうえで、必要書類を提出して借入を申し込みます。融資を受けられる金融機関の具体例は、以下のとおりです。

• 日本政策金融公庫
• メガバンク
• 地方銀行・第二地方銀行
• 信用金庫
• （制度融資）

必要書類の提出後、金融機関で審査が進められます。審査の結果承認を得られたら、金融機関との間で契約手続きが必要です。契約後、決めた日に申込人の銀行口座もしくは指定の振込先に融資金が振り込まれます。
なお、制度融資とは事業者が必要な資金をスムーズに調達できるように自治体などが設けている制度です。制度融資を利用する際は、必要書類などを準備して指定の金融機関で申し込みます。

出資の具体例

出資を受ける際は、まず投資家と接触しなければなりません。一般的に投資家は、イベントに参加する、知人から紹介してもらう、各種サービスを利用するなどの方法で探します。
投資家と接触したら、事業計画書などを使ってプレゼンして自社をアピールしなければなりません。その後財務内容や事業概要、成長性などさまざまな面を考慮し、投資対象として魅力的と判断された場合は、出資に関する契約を締結します。
出資時の契約の具体例は、投資契約・出資契約です。契約書には、譲渡する株式の種類・数・価格・期日に加え、契約違反があった場合に投資家が株式買取請求できることを認める条項などを含めることがあります。

融資を受けるメリット

融資を受ける主なメリットは、以下のとおりです。

• 経営権に与える影響が少ない
• 資金繰りの計画を立てやすい

それぞれ解説します。

経営権に与える影響が少ない

融資を受けるメリットは、経営権に及ぼす影響が少なく、出資を受ける場合と比べて経営の自由度を保てる点です。融資は金融機関に対して株式を発行せずに直接借入をする形式のため、自社の議決権に変動がありません。
ただし、融資について返済減額や返済猶予といったリスケを申し出る場合には、経営改善計画の策定などの指示をされることがあります。

資金繰りの計画を立てやすい

資金繰りの計画を立てやすい点も、融資を受けることのメリットです。
契約時点で、融資額や返済期間、金利が決まります。そのため、毎月どれくらいの額の元金・利息を支払うのかあらかじめ把握しやすいです。
また、財務内容・業績・信用面などに懸念がなければ、まとまった資金を低金利で借りられる可能性があります。たとえば、日本政策金融公庫で税務申告を2期終えている方が無担保融資を利用する場合の金利は、0.75〜2.35%です（中小企業事業、2024年12月2日現在）。
なお、一般的に貸付期間が長いほど金利も高く設定されています。
参考：日本政策金融公庫「中小企業事業（主要利率一覧表）」

融資を受けるデメリット

融資を受けるデメリットとして、以下の点があげられます。

• 返済の義務がある
• 返済が滞ると一括返済を求められる可能性がある

それぞれ確認していきましょう。

返済の義務がある

融資を受ける場合は、期日までに元本を返済する義務がある点がデメリットです。あわせて、利息も支払わなければなりません。返済期限を守らないと銀行からの信用を失い格付けが下がるため、今後融資を受けにくくなります。
また、融資額・返済額によっては、自社の資金繰りを圧迫することになるでしょう。負債が過大だと、資産を売却してもすべて返済できず、会社の存続自体が困難になります。

返済が滞ると一括返済を求められる可能性がある

融資を受けてから返済が滞ると、金融機関側から一括返済を求められる可能性がある点もデメリットです。
一般的に、融資を受ける際の契約には、「期限の利益の喪失」に関する条項が設けられています。期限の利益の喪失とは、毎月の返済額の支払いを怠るなど、契約で定められたことを破った場合に、将来支払うことを認められていた金額を含めてまとめて一括で支払う必要が生じることです。
たとえば、毎月10万円の支払いを5年続けて600万円を返済する契約を結び、10ヶ月分（100万円）の支払いを終えた状態で期限の利益の喪失に該当すると、すぐに残り500万円を支払わなければなりません。通常、直ちにまとまった資金を集めることは困難なため、最悪倒産につながる可能性もあります。

出資を受けるメリット

出資を受ける主なメリットは、以下のとおりです。

• 基本的に返済の必要がない
• 投資家のノウハウを得られる
• 信用力がなくても資金調達できる可能性がある

それぞれ解説します。

基本的に返済の必要がない

出資を受ける場合、基本的に返済の義務がない状態で資金調達できる点がメリットです。
融資と異なり元本・利息の支払いにあてる資金を必要としない分、調達した資金を自社の事業を成長させるために投下できます。とくにスタートアップやベンチャー企業のように、成長のためにお金をかけたくても手元に十分な資金がなく実現できていない企業で役立つでしょう。

投資家のノウハウを得られる

投資家のノウハウを得られる点も、出資を受けることのメリットです。
出資する投資家は、すでに多くの事業を成功させている場合や、多数の投資経験を有している場合があります。そのため、投資家からのアドバイスを参考にすることでビジネスを成長させたり、投資家の知り合いを紹介してもらい人脈を広げたりすることが期待できるでしょう。

信用力がなくても資金調達できる可能性がある

信用力がない場合でも資金調達できる可能性がある点も、出資を受けることのメリットです。
融資の可否は対象企業の信用や財務内容などに基づき、返済が確実かという点を中心に判断されるでしょう。それに対し、投資家は出資の際に対象企業の成長性やビジネスモデルなどに注目することが一般的です。そのため、融資審査にとおらない場合でも出資を受けられることがあります。

出資を受けるデメリット

出資を受けることには、以下のようなデメリットがあります。

• 経営の自由度が低下する
• 調達コストが高くなる場合がある

それぞれ確認していきましょう。

経営の自由度が低下する

出資を受けるにあたって、一般的に相手に自社の株式を交付するため、経営の自由度が低下する点がデメリットです。出資を受ける額が多いほど、自社の経営に関与される可能性も高まります。
発行する株式数によっては、議決権の多くを投資家に握られかねません。万が一過半数に達すると、経営権を奪われることもあるでしょう。

調達コストが高くなる場合がある

出資を受ける際、調達コストが高くなる場合がある点もデメリットです。
融資と異なり、出資を受ける場合は原則として利息の支払いがありません。ただし、投資家に対して利益の一部を配当金として支払う必要があります。
出資を受けてから自社が成長を遂げれば、その分投資家も多額の配当金を要求するでしょう。配当金が出資額以上になれば、結果的に融資を受ける場合よりも調達コストが高くなる可能性があります。
配当金額次第では、自社の資金繰りを圧迫することにもなりかねません。

M&Aも会社を成長させる手段のひとつ

投資（融資・出資）を受けることを検討するのは、主に運転資金を確保したり、資本を投下して事業を成長させたりするためです。その一方で、M&Aを活用することで経営の安定や事業の成長を図る方法もあります。
M&Aとは、企業の合併や買収を意味する言葉です。たとえば、M&Aで自社をより規模の大きい企業に売却して子会社となり、親会社の資本・生産体制・販路などを活用すれば、より事業を発展させられる可能性があります。
また、シナジー効果の創出もM&Aの魅力です。M&Aで自社の持つ技術やノウハウを提供する一方で、相手からの技術やノウハウも活用できれば、双方が単独で活動していたとき以上の効果を発揮できる可能性があります。

まとめ

投資とは、将来利益を得られると期待して、何かに資金を投下することです。一般的に、融資や出資も投資の一部とされています。
融資と出資との主な違いは、返済義務の有無です。融資と異なり出資には返済義務がありませんが、その分投資家に対して配当金を支払う負担がかかります。また、融資を受ける場合と比べて、出資を受ける場合は経営の自由度が低下することも違いのひとつです。
融資や出資を受ける場合以外に、M&Aを活用して自社を成長させることもあります。M&Aによるシナジー効果を生み出せれば、買い手・売り手双方がより発展できるでしょう。
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