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【M&Aの手法一覧】種類ごとの特徴や選び方を解説

投稿日:2024年08月15日
【M&Aの手法一覧】種類ごとの特徴や選び方を解説

M&Aは、特定の事業の譲渡や資本業務提携などを含めた企業提携の総称として使われる言葉です。M&Aには株式譲渡や吸収合併など、事業承継や経営改善といった企業が抱える課題を解決する具体的な手法が多数含まれています。
この記事では、M&Aの主な11の手法と選び方をわかりやすく解説します。

目次

M&Aの手法一覧

M&A(Merger and Acquisition)とは、企業の合併や買収のことを指す言葉です。また、合併や買収だけでなく、広義での企業提携の総称として使われることがあります。
M&Aは特定の目的を実現するために実施されます。買い手の主な目的は、以下をご覧ください。

買い手にとってのM&Aの主な目的

  • 短時間で事業を拡大させる
  • 相手企業の事業とのシナジー効果を得る
  • ビジネスチャンスを獲得する

売り手は、M&Aにより次の目的を達成できることがあります。

売り手にとってのM&Aの主な目的

  • 事業や企業を現金化する
  • 事業承継を実現する、後継者を探す
  • 事業投資をする

また、経営不振の企業の救済においてもM&Aは有効な手段の1つです。
目的や企業が置かれた状況によって、適切なM&Aの手法は異なります。各手法の特徴については以下をご覧ください。なお、M&Aの分類については厳密なルールがありません。そのため、資本提携や業務提携などの「提携」についてはM&Aに含めないケースもあります。

M&Aの主な手法と特徴

分類 手法 特徴
買収 株式譲渡 株式を譲渡することで経営権を譲渡する
手続きが簡単で実施されることが多い
資産や負債を選択的に譲渡できない
第三者割当増資 特定の第三者に新株を発行して出資を得る
経営権を維持したまま出資を得られる
実施には特別決議が必要
株式交換 株式を交換することで完全親子会社の関係を作る
株式以外にも現金や新株予約権を対価にすることがある
親会社株主は会社への影響力が下がる可能性がある
株式移転 新設会社の株式と既存会社の株式を交換することで、完全親子会社の関係を作る
株式以外にも現金や新株予約権を対価とすることがある
ホールディングス化をするときに用いることが多い
事業譲渡 譲渡する事業や資産を選択でき、自由度が高い
譲渡事業・資産ごとに手続きをするため時間がかかる
資産を買収するときに消費税が課せられる
吸収分割 特定の事業部門を切り離し、既存会社に承継させる
切り離した事業部門に属する資産や人材をまとめて承継できる
実施後は企業文化のすり合わせに時間がかかることがある
新設分割 特定の事業部門を切り離し、新設会社に承継させる
切り離した事業部門に属する資産や人材をまとめて承継できる
実施後の経営統合や企業文化のすり合わせはスムーズに進む傾向にある
合併 吸収合併 複数の企業が合併し、1つの企業を残して他はすべて消滅する
手続きが比較的簡単
統合プロセスに時間がかかる傾向にある
新設合併 複数の企業が合併し、新設企業のみ残してすべて消滅する
手続きが煩雑
統合プロセスがスムーズに進む傾向にある
提携 資本提携 経営権に影響を及ぼさない程度に資本を提携する
経営にかかわるアドバイスを送ることがある
業務も提携するときは資本業務提携契約を締結する
業務提携 業務のみ提携し、資本の移動はない
簡単に提携を解消できる
自社の機密情報が流出する可能性がある

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手が株式を買い手に譲渡(売却)し、対価として現金を得る手法です。買い手は経営権を得られるだけでなく、取締役会設置会社なら取締役会の決議のみで実施できることから、M&Aのなかでも活用されることが多い手法です。
株式譲渡は特定の事業や資産を選んで譲渡するのではないため、負債や法的責任(賠償請求されている場合なら損害賠償金等)などもすべて包括して譲渡します。買い手にとっては不要な負債や資産、権利も譲受する可能性も想定されるでしょう。
また、異なる企業を買収することで、統合プロセスがスムーズに進まないケースもあります。場合によってはうまく折り合わず、経営が軌道に乗るまでに時間がかかることもあります。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に向けて新株を発行し、出資を得る手法です。取得する株式数によっては、第三者が経営に参画することもあります。
第三者割当増資では、株主の保有株式数は変わらないため、経営権を保ったまま資金調達が可能です。ただし、非公開会社が第三者割当増資を実施するときは、株主総会の特別決議が必要になる点に注意しましょう。

株式交換

株式交換とは、買い手は売り手企業の全株式を取得して完全親会社になり、売り手企業は完全子会社になる手法です。買い手は売り手に対価として自社株式を交付するため、現金を準備しなくても実施できます。ただし、現金や新株予約権を対価として用いることもあります。
株式交換を実施することで親会社の株主構成は変化し、親会社の株主各自の株式保有率が下がり、企業への影響力も下がる点に注意が必要です。

株式移転

株式移転は、親会社を新設し、既存会社が完全子会社となる手法です。既存会社の株主はすべての株式を親会社に譲渡し、対価として親会社の株式を取得します。また、株式以外にも、現金や新株予約権を対価とすることもあります。
株式移転は、主にホールディングス化するときに用いる方法です。既存会社は完全子会社となりますが、親会社と経営統合をするわけではないため、株式移転実施後もスムーズな運営が可能です。

事業譲渡

事業譲渡とは、譲渡対象を選択できるM&Aの手法です。株式を使ったM&Aでは譲渡対象は選択できないことが一般的ですが、事業譲渡では事業や資産を1つひとつ選んで譲渡するため、自由度の高いM&Aを実現できます。
ただし、事業や資産ごとに譲渡手続きを行うため、煩雑で時間がかかります。また、資産を買収するときには消費税が課されるため、買い手側の負担が増えるのもデメリットです。

吸収分割

吸収分割とは会社分割の手法で、事業の一部あるいは全部を他の既存会社に承継させることです。そもそも会社分割とは、会社の特定の事業部門を切り離し、外部の買い手に承継させる手法を指します。会社分割では株式を対価として用いることが可能で、切り離した事業部門を包括的に承継できます。
吸収分割では、切り離した事業部門に属する資産や人材もまとめて買い手企業に承継可能です。ただし、買い手企業に移籍するかどうかは従業員の任意のため、従業員によっては移籍を拒むこともあるかもしれません。
包括承継のため、事業譲渡と比べると比較的手続きが簡便です。ただし、対価として株式を用いる場合は、株主構成が変わる点に注意しましょう。また、吸収分割実施後は、企業文化のすり合わせに時間がかかり、すぐに経営が軌道に乗らない可能性もあります。

新設分割

新設分割も会社分割の手法で、事業の一部あるいは全部を新設会社に承継させることです。切り離した事業部門をまとめて買い手企業に承継させるのは吸収分割と同じですが、買い手企業が新設会社である点が異なります。
新設分割では、原則として対価は新設会社の株式のみです。主に企業グループの組織再編の際に用いられます。また、切り離した事業部門に属する人材・事業はすべて新設会社に承継されるため、企業文化のすり合わせなどの統合プロセスがスムーズに進む傾向にあります。

吸収合併

合併とは、複数の企業を統合して1つの企業にするM&Aの手法です。吸収合併では、複数の既存会社が統合し、1つの存続会社を残して、残りの既存会社はすべて消滅します。
消滅会社の保有していた事業や資産、人材などは、すべて存続会社が承継します。まとめて承継できるため、手続きは比較的簡便です。しかし、企業文化のすり合わせなどの統合プロセスがうまくいかず、企業として機能するまでに時間がかかることもあります。

新設合併

新設合併とは、複数の企業を統合して、新しい1つの企業にするM&Aの手法です。合併の当事者すべてが解散し、新設会社のみ存続します。
存続会社が新設会社のため、消滅会社の許認可をそのまま引き継げず、新たに許認可を取得しなくてはいけません。また、消滅会社が上場企業の場合は、上場も取り消されます。新設会社が上場する場合は、新たに上場申請が必要です。手続きが煩雑になるため、新設合併より吸収合併の方が多く実施される傾向にあります。

資本提携

資本提携とは、資本に影響を及ぼす形で、企業間のパートナー関係を強化することです。たとえば、経営権を持たない程度に相手企業の株式を持ち合ったり、相手企業に一方的に出資をしたり、出資を受けたりすることを指します。
基本的には経営権に影響を及ぼさない程度にかかわりますが、相手企業の株主となることで内情を知り、経営につながるアドバイスを送ることはあるようです。
また、資本だけでなく業務も提携するときは、資本業務提携契約を結びます。たとえば、共同開発や共同販売をするときは、資本と業務の両方を提携することが一般的です。

業務提携

業務提携とは、資本の移動を伴わない提携のことです。技術や生産、販売などを提携し、相手企業のノウハウや強みを活かしてシナジー効果の獲得を期待します。
業務提携は資本提携と比べると関係性は弱いものの、簡単に提携を解消できるというメリットがあります。ただし、内情を開示することで自社の機密情報が流出する可能性がある点には注意が必要です。

M&Aの手法の選び方

M&Aの手法は、いずれもメリットとデメリットを併せ持ちます。どの手法を選ぶか迷ったときは、次の3つのポイントに注目してください。

M&Aの手法を選ぶポイント

  • 対価を受け取るか・支払うか
  • どのような税金が発生するか
  • どのような手続きが必要か
  • 事業を継続できるか

各ポイントについて解説します。

対価を受け取るか・支払うか

株式の移動が伴う手法では、対価が発生しやすくなります。対価を受け取るか・支払うか、何を対価とするのか決めてから、M&Aの手法を絞り込みましょう。

どのような税金が発生するか

手法によっては税金が発生することがあります。税金の種類によって負担が変わるため、事前に税理士やM&A仲介会社などに相談し、税金の種類とおおよその税額を確認しておきましょう。

どのような手続きが必要か

株式の売却が必要か、許認可を引き継げるかなど、M&Aの手法によって必要な手続きが変わります。また、手続きが多いと時間もかかるため、理想とするM&Aを実現できない可能性があります。M&Aにかけられる時間の目安も参考に、手法を選びましょう。

事業を継続できるか

株式譲渡のように全株式を相手企業に譲渡する手法では、経営権を手放すことになります。事業を継続したい場合は、経営権についても確認しておきましょう。また、従業員の処遇も確認することで、より満足度の高いM&Aを実現できます。

まとめ

M&Aを実施するには、手法だけでなく税金や経営権についての知識が必要です。スムーズに進めるためにも、専門家によるサポートを受けるようにしましょう。
M&Aの実務は、豊富な知見とノウハウを有し、圧倒的なスピード対応を誇る「M&Aテクノマージコンサルティング」にぜひご相談ください。M&Aアドバイザー、会計士や税理士などの専門家がチームとなり、実務的なアドバイスやリスクを予測した提案などトータルサポートを提供します。
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