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M&Aのディールとは?一連のプロセスと成功につながる4つの秘訣

投稿日:2024年06月03日
M&Aのディールとは?一連のプロセスと成功につながる4つの秘訣

企業の合併・買収を意味するM&Aでは、準備段階である戦略策定から、最終的な統合作業までの流れを意味するディールという言葉が多様されます。
M&Aのディールを成功させるには、経営者がM&Aに関する知見を深めるとともに、専門家のサポートを得ながら、シナジー効果を創出する交渉相手の選定および交渉などが必要です。
このコラムでは、M&Aのディールに関する知識や具体的なプロセス、成功につながる4つの秘訣を解説します。

目次

M&Aのディールとは

M&Aのディール(deal:取引)とは、M&Aを始める前の準備段階から成約後の統合作業(PMI)までの一連のプロセスのことです。
具体的には、売り手(譲渡側)と買い手(譲受側)の戦略策定や交渉相手の選定、条件交渉、トップ面談、デューデリジェンス、最終契約締結、クロージングなどがディールに含まれます。
ディールの円滑化は、M&Aの成功に直結します。そのため、様々なフェーズにおける手続きの流れや円滑な交渉術などを理解しておくことが大切です。

M&Aのディールに関する専門用語

まずは、M&Aのディールに用いられる様々な専門用語とその意味を解説します。

ディールサイズ

M&Aにおけるディールサイズとは、M&A売買における取引金額の規模(合計金額または合計価値)のことです。
通常、買収対象企業の対象となる株式、特定の事業部門の事業の買収にかかる総額を示します。
M&Aのディールサイズは非常に幅広い範囲で変動し、小規模な中小企業の取引から、大手企業による数十億円以上の大規模な取引まで様々です。

小規模案件:取引金額1億円以下
中規模案件:数億円〜数十億円
大規模案件:数百億円以上

従来のM&Aでは、大手企業同士による大規模案件が目立っていました。昨今においては、中小企業が取引に関わる中規模案件のディールサイズが増えてきています。

ディールメーカー

M&Aにおけるディールメーカー(M&Aを作り出す者)とは、取引を促進し、成約に向けて主導的な役割を担う専門家や組織のことです。
M&Aアドバイリー(代理人)やM&A仲介会社などがディールメーカーに該当し、下記のようなディールのサポートをします。

● ディールメーカーのサポート内容

  • チェック戦略立案・策定
  • 交渉先の選定・交渉
  • 事前検討
  • 基本合意書の作成・締結
  • デューディリジェンスの実施
  • 最終交渉・最終契約締結
  • クロージング

ディールメーカーは、M&Aにおける複雑な書類作成と手続き、売り手・買い手の交渉、スケジューリングなど、多岐にわたるディールに関わります。
さらに、M&Aにおける技術・人材・機能・ブランド力・信用力などの統合によって生まれるシナジー効果の創出を目指します。

ディールブレーカー

M&Aにおけるディールブレーカー(取引を破壊する要因)とは、M&Aの取引が破断する要因・問題のことです。
具体的には、取引が進展するなかで発生した争点や課題、価格交渉の行き詰まり、法的な問題、経営陣・株主の方向性の不一致、デューディリジェンスにおける課題などがディールブレーカーに該当します。
主にディールブレーカーが明らかになる場面は、デューデリジェンスを実施したあとです。

● デューデリジェンス

デューデリジェンス(DD)とは、一般的には基本合意締結後、または意向表明承諾後に買収対象企業の投資価値やリスクなどを調査することを指します。買い手側は売り手側の機密情報を取得するため、秘密保持契約を締結したうえでデューデリジェンスが実施されます。
ディールブレーカーを洗い出すために、買い手側では事業・財務・法務・税務・IT・人事などの各分野でデューデリジェンスを入念に行う必要があります。
売り手側としては、専門家に情報開示の範囲に関してアドバイスを受けながら、買い手側の意向に協力する姿勢を見せることが大切です。

プレディール

プレディールとは、実際にM&Aの取引プロセスが始まる前に、売り手・買い手企業がそれぞれ行う事前の調査・活動のことです。

● プレディールの主な取り組み

  • 戦略策定(目的・目標の明確化)
  • 交渉先の特定
  • 交渉先の情報収集・調査
  • 企業価値算定
  • シナジーの検証
  • 質疑応答の準備
  • スケジューリング
  • M&A手法(スキーム)の決定

プレディールは、取引が進む前に対象企業の情報精査と初期評価を行い、双方が進むべきかどうかを判断するための基盤を築く重要なステップです。
精度の高いプレディールには、M&Aに関する知見とノウハウを持った専門家の協力が不可欠と言えます。

ポストディール

ポストディールとは、M&Aの成約により、企業が合併または買収されたあとの経営統合作業(PMI)の段階を指します。

● 経営統合作業(PMI)

経営統合作業(PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、異なる組織や事業を効果的かつ効率的に統合するための計画・実行のことです。
経営統合作業は、M&Aを通じて得た戦略的な目標やシナジーを最大化し、合併または買収が成功するように確実性を持たせるための重要なプロセスとなります。
したがって、ポストディールフェーズは事業のコスト削減や効率向上、市場シェア拡大などの目的を達成するために非常に重要なステージです。

プレディール・ディール・ポストディールの流れ

M&Aの流れをプレディール・ディール・ポストディールの3つに細分化した場合、一般的に下記のような流れで進行します。

● プレディールの流れ

  • M&Aターゲット企業の選定、目的・目標の明確化
  • M&A専門業者の選定・契約
  • ターゲット企業の絞り込み
  • 秘密保持契約締結
  • IMとプロセスレターの提示
  • 買い手側による企業価値評価

● ディールの流れ

  • トップ面談
  • 基本合意書の作成・締結
  • デューディリジェンス
  • 最終契約交渉
  • 最終契約締結
  • クロージング

● ポストディールの流れ

  • 経営統合(ビジョンの統合、新体制の構築など)
  • 業務統合(技術・人材・ノウハウ・拠点などの統合)
  • 意識統合(企業風土の統合)

M&Aでは、プレディールからポストディールの完了まで短くて半年、長くて1年程度の期間を要します。
市場は常に変化し続けているため、取引が長期化するほど企業評価や取引価格が変動するリスクがあると想定しておかなくてはなりません。

M&Aのディールを成功させる秘訣

M&Aで目標を達成するには、ディールを円滑に進めるとともに、リスクを想定した対応と選択が様々なシーンで求められます。
ここでは、ディールを成功させる5つの秘訣を紹介します。

(1)自社分析をしたうえで目標を明確化する

M&Aの戦略策定では、経営者が自社の事業と組織の課題を分析し、課題に応じた目標設定をすることが大事です。
例えば、SWOT分析というフレームワークでは、自社のStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を具体的に挙げて自社分析を行います。
分析結果に基づき、経営環境や組織体制、事業内容、事業規模、流通網、技術、ノウハウ、人材などにおける課題を抽出したうえで、M&Aでどのような課題を解決したいのか明確にしましょう。

● 売り手(譲渡側)の主な目標

  • 事業承継を実現して廃業を回避する
  • 事業の一部を譲渡してコア業務に資源を集中させる
  • 創業者利益を得て新たな事業の資金を確保する
  • 経営者の個人保証・債務を解除する
  • 事業に投じた資金の回収を早める

● 買い手(譲受側)の主な目標

  • 競合他社を買収して市場シェアを拡大する
  • 自社にない技術とリソースを得て事業を強化する
  • 後継者を確保して事業承継問題を解決する
  • 自社にない拠点を持つ企業を買収して新規事業を開拓する
  • 同業他社の技術・人材・機能を経て事業規模の拡大を加速させる

(2)交渉相手との親和性を事前に調査する

M&Aでは、売り手・買い手の戦略的な目標・方針が合致している場合、より高いシナジー効果を得られやすいです。
例えば、同業種の統合により、市場・業界でのポジションを向上させる、事業拡大に必要な資源を確保するなどの目的が合致していれば、M&Aが成功する可能性が高まります。
また、事業を買収する際は、どの程度の有形資産・無形資産を引き継ぐのか慎重に決めなければなりません。場合によっては、想定していなかった負債を引き継ぐ可能性があります。
最終判断をする際は、M&Aアドバイザーなどの専門家のアドバイスを受けながら、最良の選択をする姿勢が大切です。

(3)ディールブレーカーを避ける交渉が必要

M&A取引において、ディールブレーカーを避けるためには、売り手側と買い手側の両方が効果的な交渉術を持つことが重要です。

● 売り手側(譲渡側)の交渉術

  • 可能な限り正確かつ包括的な情報を提供する
  • 企業のストーリーを明確に伝えて、企業価値の提案を行う
  • 相手の立場も理解して、価格交渉の妥協点を見つける努力をする
  • 円滑なデューディリジェンスを支援するため、必要な情報にアクセスしやすくする

● 買い手側(譲受側)の交渉術

  • 自社の戦略的な利点や合理的を強調して売り手の理解を得る
  • 根拠を明確にすることで企業評価・提案価値に説得力を持たせる
  • 謙虚な姿勢で売り手を対等な立場に立ち、Win-Winな提案をする
  • デューディリジェンスで浮上したリスクに対して、具体的な対応策を提示する

ディールブレーカーを避けるためには、企業の透明性を積極的に示し、相手に寄り添ったコミュニケーションと柔軟性のある提案で相互の信頼を築くことが重要です。

(4)M&A専門業者を慎重に選定する

M&Aのディールでは、あらゆるフェーズでディールブレーカーが存在するため、経営者の知識不足や交渉の仕方によって破断につながることも珍しくありません。
M&Aのディールで成功を収めるには、市場トレンドや法的な要件、財務評価などに精通したM&Aの専門家の力が必要になってきます。
M&Aの専門家とは、公認会計士・税理士・弁護士などの士業、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、M&Aアドバイザー、M&A仲介会社、マッチングプラットフォーム業者を指します。
例えば、売り手側に立ってM&A専門業者を選定する際は、下記を参考にしてください。

● M&A専門業者の選定ポイント

  • 士業を含めた専門性の高いチームで対応している
  • M&A成立までの期間が短い
  • サービス内容に見合った価格であるか
  • 取引の規模、依頼したい内容で実績のあるサービスか
  • M&Aの成約実績が豊富であるか

M&A専門業者の形態によって、サポートする立場が異なります。そのため、ディールにおけるどのような場面、どのような業務におけるサポートに特化しているかを確認し、複数他社を比較しながら自社に最適な1社を選定しましょう。

まとめ

M&Aのディールは、戦略策定からM&A成約後の統合作業(PMI)までの多岐にわたるプロセスを指します。
戦略策定や交渉相手の選定を行うM&A準備期間をプレディールと呼び、成約後に行う経営統合・業務統合・意識統合などのPMIをポストディールと呼びます。
M&Aのディールを成功させるには、M&Aに関する幅広い知識をはじめ、交渉相手を納得させる交渉術や法律が絡んだ専門的な知見が必要です。
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