個人M&Aとは?メリット・デメリットと失敗を避ける3つのポイント
経営者の高齢化に伴う後継者不足問題に直面する企業が増えるなか、個人と企業で事業承継を行う個人M&Aの案件が増えています。
個人M&Aは、売り手・買い手の双方に様々な利益をもたらしますが、成功につなげるには幅広い専門知識のインプットや専門家への協力依頼が不可欠です。
このコラムでは、個人M&Aで事業を譲渡・譲受するメリットとデメリット、失敗を避けるポイントなどを解説します。
個人M&Aとは
M&Aは、企業同士の合併・買収を意味する言葉であり、個人が買い手(譲受側)となる個人M&Aも行われています。
個人M&Aの場合、1,000万円以下の少額で買収するケースが多いです。そのため、個人M&Aの多くはマイクロM&Aが主戦場とされます。
個人M&Aの買い手になる場合、起業にかかるコスト・手間・時間を大幅に省きながら、効率よく準備を進められるのが大きなメリットです。売り手側の企業としては、事業承継の実現や経営者の個人保証の解除といったメリットがあります。
個人M&Aによる買収は、起業したい個人事業主に限らず、サラリーマンが副業で行うこともあります。企業同士で行うM&Aよりもハードルが低いと思われがちですが、買収候補企業の分析・評価を行うデューデリジェンスや、価格交渉を個人で対応するのは難しいです。
そのため、個人M&Aは業界に精通した専門家のサポートを受けながら進めるのが一般的です。
個人M&Aが以前より活発化してきた理由
従来のM&Aでは、大手企業同士による大規模な合併・買収が多く行われていました。
しかし、近年はM&AマッチングプラットフォームやM&A仲介会社を活用した小規模〜中規模の案件も増えてきています。
個人M&Aの案件が以前よりも増えてきた理由としては、下記の4つがあげられます。
● 個人M&Aが増えてきた理由
- 中小企業を中心とした事業継承問題の解決につながる
- 後継者不足に悩まされている小規模な売り手が増えてきた
- 副業・兼業を許可する企業が増えてきた
- M&AマッチングプラットフォームやM&A仲介会社の増加
経営者の高齢化に伴う後継者問題を抱える企業が増えたことで、個人M&Aを利用する売り手が増えたと考えられています。
また、M&A市場の成長に合わせて、最良の売り手・買い手をマッチングさせるプラットフォームや仲介会社が続々と誕生したことも、個人M&Aを成立させる追い風となりました。
個人M&Aのメリット・デメリット
ここからは、個人M&Aで売り手(譲渡側)になる場合、買い手側(譲受側)になる場合のメリット・デメリットを詳しく紹介します。
個人M&Aのメリット
M&Aでは合併・買収をした場合、企業の新たな成長を促進して市場シェアの拡大や企業価値の向上などにつながります。
個人M&Aにおける売り手側と買い手側に視点を当てた場合、下記のようなメリットがあげられます。
● 売り手側(譲渡側)メリット
- 対企業であるような稟議フローや取締役会などの意思決定フローが少ない
- 意思決定者が個人のため、金額面や条件で柔軟に対応してもらえるケースが多い
- 論理的な思考以外で買収を検討してもらえるケースがある
●買い手側(譲受側)のメリット
- 株式譲受の場合、未上場株式に対する投資の窓口が広がる
- 個人が持つ強みを活かしながらビジネスを展開できる
- 個人での許認可を取得するのが難しいビジネスに参入できる
個人M&Aで売り手側になる場合、企業と行うM&Aにあるような複雑な意思決定フローを省略できるのがメリットです。対個人になるため、柔軟に交渉が進むケースもあります。
買い手側になる場合、未上場企業の株式に対する投資の窓口を大きく広げることが可能です。これは、株式譲受の場合であり、未上場株式であっても上場株式と同じ株式扱いになり、投資と同様の性質を持っているからです。
個人M&Aのデメリット
M&Aでは、事業内容・企業文化・風土・その他の様々な規則などが異なる企業同士で統合する難しさがあります。
さらに、個人M&Aにおけるデメリットもあるため、事前に把握しておきましょう。
● 売り手側(譲渡側)デメリット
- 個人事業主の場合、事業譲渡の複雑な手続きがある
- 買い手が企業の場合、様々な部分を厳しく査定したタフな交渉が必要
- 譲渡の背景を正しく伝えるのが難しい場合がある
● 買い手側(譲受側)のデメリット
- 対企業と比べて業績が良い案件を見つけにくい
- 取引先や従業員の信頼獲得に苦労する
- 対企業よりも少額な案件が多く、大きな利益につながらない可能性あり
個人M&Aでは、対企業と比較して業績が悪い案件が多くなり、売り手と買い手の条件がなかなか一致しないことが考えられます。
中小企業の先代経営者が退き、縁のない個人事業主が新たな経営者となった場合、取引先や従業員の信頼獲得に苦労しやすいこともデメリットにあげられます。
M&Aでは、自社分析から企業価値や事業の将来性を適切に見い出し、親和性の高い買い手とマッチングすることが大切です。
個人M&Aを支援するサービスの特徴
M&Aでは規模を問わず、財務・税務・会計・法務・労務などの領域で専門知識が求められます。
個人で売却・買収相手を見つけて交渉するのは難しいため、M&Aに精通した専門業者、専門家、仲介サービスなどを利用するのが一般的です。
ここからは、M&Aを支援する代表的なサービスを紹介します。
M&Aマッチングサイト
小規模な個人M&Aの案件を探す際、最もハードルが低い方法が会員制のM&Aマッチングサイトの利用です。
M&Aマッチングサイトは、譲渡側と譲受側がそれぞれの条件やニーズに沿った交渉相手を見つけて、実際に交渉に移るまでのプロセスを支援しています。
M&Aマッチングサイトの主なサポート内容
- 譲渡側・譲受側の企業情報と売却・買収条件などの公開
- 希望条件に合った相手への交渉リクエスト
- FAやM&A仲介会社への支援依頼
M&Aマッチングサイトでは、譲渡を希望するユーザーが企業情報や買収ニーズなどを匿名で登録します。
買収を希望するユーザーは、登録された売却案件情報を閲覧して、条件に合った相手に交渉のリクエストを送信する流れとなります。逆に譲渡側が譲受側の企業情報を閲覧して、リクエストを送ることも可能です。
リクエストを送ったあと、相手側がオファーに応じることでマッチング成立となり、その後の交渉へと移ります。
M&Aマッチングサイトは、個人M&Aで利用しやすい反面、M&Aアドバイザーなどの専門家による交渉・手続きのサポートまでは提供されていません。そのため、交渉に移る際に、専門業者へ支援を依頼するのが一般的です。
事業引継ぎ支援センター
事業引継ぎ支援センターとは、事業承継を支援する全国47都道府県に設置された公的機関のことです。
事業承継に精通した専門家によるアドバイスや、マッチング支援などを受けられる機関であり、法人が個人に対して売却を行うM&Aもサポートしています。
主なサポート内容は下記のとおりです。
● 事業引継ぎセンターのサポート内容
- 各分野の専門家による無料相談対応
- 企業の状況に応じたM&Aの手法、買い手の探し方などのアドバイス
- 各センターと連携した譲受候補の紹介
国が運営している事業引継ぎ支援センターは、無料でサービスを利用できるのが大きなメリットです。
ただし、事業承継をメインとした相談・アドバイスに対応している機関のため、小規模な個人M&Aの案件数は少ないです。
また、デューデリジェンスやバリュエーションに関するサポートは、外部の専門家が関わるため、別途相談料などが発生します。
● デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、財務・税務・会計・法務・労務などの各分野で、買収対象企業の価値や成約によるリスクなどを調査・評価することを指します。
● バリュエーション
バリュエーションとは、企業価値評価のことです。企業価値、事業の収益性、有形・無形資産などのあらゆる要素から、買収する価値を算定する工程です。
事業承継マッチング支援
日本政策金融公庫が運営する事業承継マッチング支援は、事業を譲り渡したい者、事業を譲り受けたい者のマッチングを無料でサポートするサービスです。
● 事業マッチング支援の主なサポート内容
- 事業承継に関する無料相談対応
- 日本公庫の専任担当者による譲渡候補・譲受候補の絞り込み
- 後継者不在の小規模事業者などを対象とした専門的なアドバイス
事業承継マッチング支援の利用者は、ほとんどが小規模事業主となっているため、個人M&Aの案件探しでも活用しやすいです。
売り手・買い手の双方が無料で利用できるサービスですが、マッチング後の円滑な交渉を希望する際には別途M&A専門業者への依頼が必要となります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社では、各社が持つネットワークや提携先の情報を活用し、顧客企業の要望に沿った候補企業を紹介しています。
候補企業の紹介だけに留まらず、専門家が介入した交渉支援やデューディリジェンスなども幅広くサポートしています。
● M&A仲介会社の主なサポート内容
- 顧客企業(売り手・買い手)にとって適切な候補企業の紹介
- 候補企業との交渉、必要書類の作成、デューディリジェンスなどの支援
- M&Aアドバイザー、コンサルタント、士業などの専門家によるアドバイス
M&Aのプロセスは多岐にわたり、仲介会社によって得意分野やサポート範囲が異なります。また、在籍している専門家とチーム体制もM&A仲介会社によって異なるため、重要な選定ポイントとなります。
料金については、相談料や着手金が発生するケース、M&A成約後に成果報酬として発生するケースなどがあるため、予算に応じて選ぶ必要があります。
個人M&Aで失敗を避ける3つのポイント
個人M&Aでは、不十分なデューディリジェンスや評価不足、法的な問題、統合計画の不備などが原因で思うような結果が得られないケースがあります。
ここでは、個人M&Aで失敗を避けて成功につなげる3つのポイントを解説します。
(1)デューデリジェンスを十分に行う
デューデリジェンスでは、売り手企業の経営状況や事業内容、財務状況、法的リスクなどを徹底的に調査し、潜在的な問題点やリスクを特定する工程です。
デューデリジェンスが不十分だった場合、買収先の真の価値や潜在的な問題点を見つけられず、想定外のトラブルにつながる可能性があります。
個人で実施できる範囲には限りがあるため、実績が豊富なM&AアドバイザーやM&A仲介会社のコンサルタント、弁護士・税理士・会計士などの士業に依頼することが望ましいです。
(2)個人M&Aに見合った規模で実施する
個人が買収するM&Aでは、事業主の経験・知識・リソース・資金不足などが事業の成長や維持に支障をきたす可能性があります。そのため、コントロールできる規模の事業のみ引き継ぐのが望ましいです。
自身で管理しきれない大規模な事業を引き継いだ場合、事業拡大・改善に必要な資金調達が困難となり、従業員の管理やコミュニケーションも難しくなります。
譲渡側の企業においても、事業の継続と発展、将来的な利益の創出につなげるために、個人M&Aに見合った規模の案件を選定することが大切です。
(3)M&A専門業者に依頼する
個人M&Aの案件はM&Aマッチングサイトで多く流れていますが、M&Aの専門知識や経験がなければ、自社と親和性の高い候補探しと交渉で多くの苦労が待っています。
あらゆるリスクに備え、安心してM&Aの取引を進めたい場合、M&Aアドバイザーと法律の専門家が連携してM&Aのプロセスを支援してくれるサービスを利用するのが望ましいです。
M&A専門業者を選定する際は、自社の悩みを解決してくれる専門家が在籍しているか、どのような案件でM&Aの成約実績があるかなどに注目しましょう。
まとめ
個人M&Aは、一般的に売買金額が1,000万円未満の小規模案件を指し、マイクロM&Aが主な主戦場となります。
中小企業の後継者不足問題が加速する日本では、個人M&Aの需要が今後さらに高まる可能性があります。個人M&Aに踏み切る際は、あらかじめ取引のメリット・デメリットや失敗を避けるための対策を心得ておくことが大切です。
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