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M&Aとは?様々な手法とメリット・デメリットをわかりやすく解説

投稿日:2024年06月03日
M&Aとは?様々な手法とメリット・デメリットをわかりやすく解説

中小企業における後継者不足が深刻化するなか、M&Aで第三者承継を選択して新たなビジネスチャンスを模索する企業が増えています。
企業の合併・買収を意味するM&Aには、事業譲渡や株式取得などの様々な手法があります。
M&Aの売り手・買い手にとって最良なマッチングは、高いシナジー効果を生み出すため、競争が激化している市場では有効な成長戦略の1つです。
このコラムでは、M&Aの概要や種類、売り手側と買い手側のメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。

目次

M&Aとは

M&A(エムアンドエー)とは、企業が合併(Mergers)または買収(Acquisitions)されるプロセスのことです。2つ以上の企業が合併する際や、他の企業を買収をする際などにM&Aという言葉が使用されます。
M&Aは、主に企業の合併と買収を指しますが、新設合併や事業譲渡、株式取得などの手法に細分化されています。多岐にわたる戦略的要素・財務的要素が絡む複雑なプロセスであるため、法的効力や経済的な専門知識が必要です。
広義でM&Aを考えた場合、業務提携・資本提携といった協業関係が含まれることもあります。

M&Aの手法・種類

M&Aにおける合併と買収について、それぞれの手法をわかりやすく解説します。

M&Aにおける合併

合併とは、異なる企業同士が1つの法人に統合することを指します。
M&Aにおいては、吸収合併と新設合併という2つの手法に分けられます。

● 吸収合併

吸収合併とは、1つの企業の法人格を残し、残りの企業の法人格を消滅させ、権利義務をすべて承継させる手法です。吸収された企業の資産・負債や、従業員などの財産が引き継がれます。

● 新設合併

新設合併とは、合併するすべての企業の法人格を消滅させ、新設した企業に権利義務を承継させる手法です。吸収合併よりもM&Aの手続きが煩雑になります。

M&Aにおける買収

買収とは、ある企業が他の企業の株式などを取得して、事業部門を買い取ったり、株式の過半数以上を買い取ることで議決権を獲得する手法です。
M&Aにおける買収の手法は、大きく分けて事業譲受・資産買収、株式取得・資本参加に分けられます。

● 事業譲渡

事業譲渡とは、ある企業が営む事業を一部、またはすべてを他の企業に譲渡することを指します。企業全体を売却する株式譲渡とは異なり、譲渡対象となる事業を選択できます。

● 株式取得

株式取得とは、買い手側が売り手側の株式を取得して買収を実施する手法です。株式取得でM&Aを行う場合、株式譲受・株式交換・株式移転という3種類の選択肢があります。

● 会社分割

会社分割とは、企業が営む事業の一部、またはすべてを切り離すことです。M&Aでは、事業の一部を切り離して承継させる吸収分割が一般的な手法です。売り手側の企業は、買い手側の株式や現金を対価として受け取ります。

M&Aの売り手側(譲渡側)のメリット

M&Aは、後継者不足に悩んでいる企業や、経営を退いたあとの従業員の雇用や取引先との関係を維持したい経営者に多くのメリットをもたらします。
ここでは、M&Aにおける売り手側(譲渡側)のメリットを5つ紹介します。

(1)事業承継問題の対策となる

M&Aは、企業の後継者不足に伴う事業承継問題の対策の1つとなります。
中小企業の経営者の高齢化が進んでいる日本では、経営者の親族や役員・従業員を含めて後継者が見つからない企業が多く見受けられます。
中小企業庁が公開した『 中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題 』では、2025年までに70歳以上の中小企業経営者が約245万人に達すると推測しています。そのうち、127万人が後継者未定であると見込まれているため、経営者の高齢化に伴う事業承継問題は深刻な状況です。
第三者の企業に事業を売却または譲渡するM&Aでは、後継者候補が見つからない場合でも、廃業せずに事業を継続させられるのが大きなメリットです。

(2)従業員と取引先との関係性を維持できる

M&Aでは、不動産・設備・技術などの資産に加えて、従業員の雇用や取引先との関係性まで引き継ぐのが一般的です。
ただし、事業譲渡の場合は、従業員の雇用や取引先との契約は再契約となるため注意が必要です。
廃業した場合、企業に貢献してくれた大切な従業員が失職し、行き場を失うことになります。
M&Aなら、従業員の将来に配慮しながら経営から退くことができ、取引先への影響も最小限に抑えられます。
また、売却した企業が大企業の傘下となった場合、従業員のモチベーション向上や、離職率の低下につながるのもメリットです。

(3)キャピタルゲインを得られる

M&Aでは、第三者に事業譲渡を実行したり、株式の売却で売却益が出たりした場合、株主はキャピタルゲインを得られます。
M&Aなら株式譲渡所得の税制面において優遇を受けられるため、中小企業経営者の老後資金を確保する目的でも活用されます。

(4)事業への投資の回収を早められる

M&Aでは、事業の将来的な収益を価値として算定できるため、買い手側が価値を認めた場合に早期に資本を得ることができます。
本来、事業に投資した資本の回収には多くの時間を要し、長期的な計画で投資の回収を考えていかなければなりません。
M&Aなら買い手側とのマッチング次第で、投資回収までの期間を大幅に短縮できます。

(5)経営者の連帯保証(個人保証)を解除できる

経営者が連帯保証(個人保証)を負っている場合、仮に会社が倒産したときに債務の全額を個人で返済しなければなりません。
M&Aで事業承継を行う際、『経営者保証に関するガイドライン』に基づいて経営者の連帯保証(個人保証)を解除することが可能です。
連帯保証(個人保証)の解除によって売り手側の企業の経営者は、業績悪化や倒産の際に自身が債務を全額返済しなければならないプレッシャーから解放されます。

M&Aの売り手側(譲渡側)のデメリット

M&Aで企業を売却する際、契約の合意までにかかる期間の長さや、従業員や取引先への影響などがデメリットにあげられます。
ここでは、M&Aで売り手側になる場合に把握しておきたい5つのデメリットを紹介します。

(1)短期間で成立するケースが少ない

M&Aの合意に至るまでは数多くのプロセスがあり、短期間で成立するケースは少ないです。
例えば、買い手側との交渉や譲渡条件の折り合い、デューデリジェンスへの協力要請、さらには合意後の契約手続きにも手間と時間がかかります。
M&Aの契約は基本的に長期的になり、場合によっては交渉中に破断になるリスクもあります。
自社にとって最適な買い手とマッチングしたい場合、M&A仲介業者や外部ネットワークの活用を検討することも大事です。

(2)従業員が新たな組織に馴染めない可能性あり(株式譲渡の一部を除く)

M&Aでは、株式譲渡の一部のケースを除き、基本的に従業員も含めた資産を買い手側に譲渡する形となるため、従業員は新たな環境を受け入れなければなりません。
例えば、企業理念・ビジョン、組織文化・風土、雇用条件、労働環境などの多岐にわたる変化を受け入れる必要があります。
従業員によっては、新しい組織や環境に馴染めず、離職につながるケースも考えられます。
そのため、統合作業では、経営面・業務面・意識面などの領域で混乱を招く可能性があるため、スムーズな浸透を促す計画を立てておくことが大事です。

(3)取引先に少なからず影響がある

取引先との関係性は買い取り側の企業で継続されますが、取引条件の見直しが行われる可能性もあります。
取引先によっては、新しい企業の経営陣や経営方針に対して、不確実性や懸念を抱かれるケースもあります。
また、M&Aにより企業価値や市場ポジションが変わることで、取引先との価格交渉に影響を及ぼすことも考えなければなりません。

M&Aの買い手側(譲受側)のメリット

M&Aの買い手側には、スムーズな事業展開や事業規模の拡大、自社の弱点強化、販路拡大などの様々なメリットがあります。
ここからは、M&Aの買い手側(譲受側)になった場合のメリットを5つ紹介します。

(1)新規事業をスムーズに展開できる

新規事業の展開にあたって、すでにその事業を展開している企業を買収した場合、スムーズに計画を進められます。
M&Aなら、新規事業を立ち上げる際に必要な土地や不動産、設備、資材、リソースなどをまとめて得られるため、コストと時間を大幅に削減できます。
初期投資を抑えられるため、事業を軌道に乗せるまでのリスクが低減することが可能です。

(2)短期間での事業規模の拡大

M&Aの買い手側は、売り手側から有形を受け取るだけではなく、価値のある無形資産も多く受け取ることになります。
同業の企業を買収した場合、顧客基盤や流通網、専門技術、優秀なリソースを得られるため、短期間で事業規模を拡大させられます。
さらに、マーケットシェアの拡大によって企業価値や知名度の向上にも期待できるため、競合優位性を築く足がかりになるのもメリットです。

(3)シナジー効果で経営推進力を高められる

M&Aにおけるシナジー効果とは、合併・買収によって新たな組織が生まれた際、それによって得られる付加価値や協力効果のことを指します。

● M&Aのシナジー効果

  • 機能や業務の統合によるコスト削減
  • 製造プロセスとサプライチェーンの最適化
  • 市場シェアの増加と顧客層の拡大
  • 技術とイノベーションの融合
  • 優秀な人材による組織のパフォーマンス向上
  • 資本コストの削減と資本効率の向上

売り手側と買い手側で事業内容や技術、インフラなどの親和性が高いほどシナジー効果が生まれ、事業のさらなる成長に期待できます。

(4)商圏を効率よく拡大できる

M&Aでは、自社とは異なるエリアに拠点を持つ企業を買収することで、新規開拓にかかる手間を大幅に削減できます。
ゼロから商圏を拡大する場合と比べて、競合調査やマーケット調査、地域特性の把握がスムーズに進み、新規拠点の設置や営業体制の構築も捗るのがメリットです。
特定のエリアで強固な販路と顧客基盤を築いている企業を買収すれば、そのメリットはより大きなものとなります。

(5)ブランド価値の向上

特定の業界で確固たる地位を築いているブランドを買収した場合、買い手側の企業には新たなブランド価値がもたらされます。
企業のブランド力は、ステークホルダーとの関係性や業界で築いてきた人脈、物流網などの様々な要素から創り上げられるものです。
売り手側と買い手側が合意し、ブランドが持つ有機的なつながりも引き継いだ場合、大きなシナジー効果が生まれます。

M&Aの買い手側(譲受側)のデメリット

M&Aで買い手側になる場合、思うような結果に至らない可能性があることも想定しておかなければなりません。
ここでは、M&Aで買い手側になった場合に懸念される5つのデメリットを紹介します。

(1)見えない価値の見込みに差分が生じる可能性あり

事業規模の拡大、新規事業の開拓などを目的に買収を行なった場合、のれん(無形財産)の見込みに差分が生じる可能性があります。
のれんとは、財務諸表では見えないブランド力・ノウハウ・顧客資源・従業員の能力などの価値を指すものです。
買収した時点で、のれんを直接算定する方法はありますが、実際に将来もたらされる価値とギャップが生まれるケースもあります。

(2)シナジー効果が思うように発揮されない

活躍している業界や事業内容、企業文化などが異なる企業同士で行うM&Aは、すべてのケースでシナジー効果が発揮されるわけではありません。
例えば、異なる複数のブランドを統合する場合、それぞれ確立してきた価値を上手く融合できず、大きな影響として表れないことがあります。
また、レガシーな機能を大切にしている企業とDX化が進んだ企業が合併した場合、従業員が異なる企業文化に馴染めず、生産性が低下する可能性があります。
M&Aでは、シナジーを強く見積もりすぎず、保守的な観点で将来性を考えることが大事です。

(3)組織体制の再構築に苦労する

M&Aによって、異なる企業文化・風土、雇用条件、労働条件、待遇などを統合する必要がある場合、組織体制の見直しが必要です。

● 統合時に検討すべき事項

  • 経営理念とビジョン
  • 企業文化と風土
  • 人事制度
  • 雇用条件と労働条件
  • 業務プロセス
  • システムの運用
  • 事業所、事務所、店舗
  • 財務会計など

統合後の組織体制でトラブルを避けるには、M&Aの成約前に経営者同士で打ち合わせを重ね、将来的なギャップを埋めることが大事です。

一般的なM&Aの流れ

M&Aは、売り手側と買い手側で目的を明確にしたあと、条件に合う相手先とのマッチングと交渉を経て、取引実行となります。

  1. 企業を売却・買収する目的の明確化(双方)
  2. 決算表・財務業の準備(売り手側)
  3. 買収先の条件絞り込み(買い手側)
  4. ノンネームシートの開示(売り手側)
  5. 秘密保持契約の締結(双方)
  6. 案件概要書の提示(売り手側)
  7. 基礎情報の分析(買い手側)
  8. 経営者同士のトップ面談(双方)
  9. 基本合意書の締結(双方)
  10. デューディリジェンス(双方)
  11. 最終契約(双方)
  12. クロージング・取引実行(双方)
  13. 統合プロセスの実施(買い手側)
  14. 情報開示・事業展開(買い手側)

M&Aを成功させるには、株式・会計・税務・法務など多岐にわたる専門知識が求められます。
M&Aを円滑に進めたい場合、豊富な知識と実績を持つM&A仲介業者によるサポートを受けることも検討しましょう。

まとめ

企業の合併・買収を意味するM&Aは、第三者承継によってスムーズな新規事業の展開や事業規模の拡大、新たなビジネスチャンスを掴むための成長戦略です。
M&Aは、売り手側と買い手側で異なるメリットがあり、売り手側の場合は事業承継問題の対策や個人保証の解除などを目的として活用されています。
買い手側の視点では、新規事業展開におけるコストの抑制や短期間での事業規模の拡大などが大きなメリットです。
M&Aはすべてが成功するとは限らず、親和性の高い売り手と買い手のマッチングが重要な鍵となります。
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